北朝鮮の金正恩総書記の娘、キム・ジュエ氏が85日ぶりに公の場へ姿を現した。最後の露出は9月初旬の訪中時で、帰国後は一切の公開活動に帯同せず、過去最長となる「雲隠れ」状態が続いていた。

その間、「体調不良説」から「中国側の不快感」「外交儀礼上のトラブル」、さらには「内部反発」まで、さまざまな憶測が飛び交った。有力な後継者と目されるだけに、ジュエ氏の動静や周辺をめぐっては、北朝鮮権力内部の葛藤と結びつけて語られることも多い。

しかし11月28日、平壌で行われた北朝鮮空軍創立80周年記念行事に父・金正恩総書記とともに再登場した。北朝鮮国営メディアは、長い沈黙を破るかのように大量の写真と映像を公開。ジュエ氏が父と同じ黒い上質なレザーコートに身を包み、戦闘機のパイロットらと並ぶ様子を大々的に報じた。

注目されるのは、その容貌の変化だ。今年5月と6月の写真と比べると、頬が引き締まり、顔の輪郭が明らかに変わったように見える。

キム・ジュエ氏(写真:労働新聞)
キム・ジュエ氏(写真:労働新聞)

米政府系の「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」は今年4月下旬、ジュエ氏の急成長を目にした北朝鮮住民の間で「背を高くする薬への関心が高まっている」と伝え、韓国製の栄養剤「テンテン」を求める住民が増えていると報じた。韓国メディアは後継者候補としてのジュエ氏に常に注目しているため、容貌の変化をめぐり健康問題や人為的な処置、つまり美容整形疑惑が浮上する可能性も否定できない。

一方、9月の訪中時には、閲兵式や中朝・ロ朝首脳会談から完全に外され、大使館に籠もっていたとされる。この状況は「北京側の意向か」「行事で突発行動があったのでは」といった憶測を呼んだ。しかし、首脳会談や軍事パレードなどの公式行事にジュエ氏を同席させるのは時期尚早、あるいは諸外国の反発を避けるため北朝鮮側が意図的に外したという見方も成り立つ。今回の再登場には、こうした噂を一掃する狙いがあった可能性がある。

わずか10代前半の少女が後継者候補として注目される一方で、金正恩体制がジュエ氏をどのように見せたいのか、そして何を隠そうとしているのか──。今後の露出頻度や、変化が指摘される容貌の扱われ方が、金正恩後継体制の行方を推察するうえで重要なヒントになるかもしれない。