金正恩の「拷問部隊」がまた一人やられた。
中国、ロシアとの国境に接する咸鏡北道(ハムギョンブクト)の某市で、検閲(監査)に派遣されていた保衛員(秘密警察)が殺害される事件が起きた。
咸鏡北道保衛局は先月末、穏城(オンソン)や会寧(フェリョン)、茂山(ムサン)など中国、ロシアとの国境に面した地域に、保衛員を派遣した。地域の保衛部のイルクン(幹部)の不正行為について検閲を行わせるのが目的だ。
そんな中で、ひとりの保衛員が忽然と姿を消した。咸鏡北道保衛局は、当該地域の保衛部に捜索を命じたが、一向に行方が掴めなかった。
その2日後、保衛員は町の裏山で遺体となって発見された。複数の刺し傷があったとのことだが、その具体的な数は明らかになっていない。事態を重く見た平壌の国家保衛省は、調査班を現地に急派した。彼らは、外部との接触を完全に遮断した状態で調査を行っている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面外部との接触を断っているのは、仮に容疑者が地元保衛部の関係者だったとして、丸め込まれるのを防ぐためだろう。
当局は一般の殺人事件であっても、容疑者を逮捕し、裁判を経て処刑に至り、犯罪抑止効果があると判断した場合に限って、情報を公開する。同様の意味合いで、裁判や処刑を公開する場合もある。ましてや、被害者が保衛員とあっては、政治的事件である可能性があり、情報管理が徹底される。
ところが、事件の噂は地域住民に恐ろしい速さで広がってしまい、様々な憶測を呼ぶ事態となった。その内容は、だいたいこのようなもののようだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「不正行為に関する検閲で、(地域の保衛部の)幹部は士気がガタ落ちだった。おそらく今回の事件は、保衛部の不正行為と関連している可能性があるとの疑いが高まっている」
金正恩総書記は、チャイナ・テレコムなどの中国キャリアの携帯電話を経て、国内情報の国外流出、国外情報の国内流入が起きていると断定し、これら携帯電話ユーザーを寝根絶やしにせよと繰り返し命じている。
(参考記事:北朝鮮女性を追いつめる「太さ7センチ」の残虐行為)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面地域の保衛部は取り締まりを行っているが、実際は逮捕した人に拷問を加え、恐喝して、多額の現金を巻き上げた上で釈放する行為を繰り返している。また、一時は影を潜めていた密輸の幇助、加担も徐々に増えつつあるようだ。
(参考記事:金正恩への「裏切り」でボロ儲けする、北朝鮮の治安機関)当局は、このような不正行為を厳しく取り締まっている。先月末の先月27日に開かれた朝鮮労働党中央委員会第8期第30回書記局拡大会議で、槍玉に挙げられた慈江道(チャガンド)の雩時(ウシ)郡での不正行為と関連して、幹部ら10人が処刑されたと伝えられている。
今回、検閲が行われた詳しい理由はわかっていないが、摘発されれば重罰は免れないだろう。追い詰められた何者かが、検閲担当の保衛員を殺害した可能性も充分に考えられる。
(参考記事:北朝鮮レストランから消える「二人きりになれる空間」)容疑者が検挙されていない状況で、地域の保衛部は探知機を使った捜索などを行っているが、これが地域住民から不興を買っている。
(参考記事:手錠をはめた女性の口にボロ布を詰め…金正恩「拷問部隊」の鬼畜行為)市場で親しい友人同士で井戸端会議をすることすら憚られるほど、恐怖が地域全体を覆っているのだ。容疑者が保衛部の関係者ではなく、恨みを抱いた民間人である可能性もあり、ちょっとしたことで連行されかねないからだろう。保衛員や安全員(警察官)に対する報復殺人は、決して珍しいことではない。