人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは、今年1月1日に放送した新年慶祝講演で、金正恩総書記の妹の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長が、女児と男児の手を繋いで歩く姿を公開。これを見た北朝鮮の人々は、金与正氏の子どもたちだと判断し、大いに驚いたという。彼女の祖父(故金日成首席)と父(故金正日総書記)の時代には、金王朝の「実子情報」が神聖不可侵のものと考えられていたからだ。

実際、すでに金正恩政権になっていた10年ほど前にも、金与正氏に関する情報はタブーだった。

たとえば2015年5月には、彼女の学生時代の同級生十数人が謎の失踪を遂げる事件があった。デイリーNK内部情報筋によれば、金与正氏の金日成総合大学時代の同級生十数人が、勤務先の平壌の中央機関から一斉に姿を消した。その後、全員が地方に追放されたことが明らかになるが、追放の理由は、ほんの些細な言動だった。

彼らが「金与正は同級生だ」と周囲に言いふらしていたことが、問題視されたのだ。

(参考記事:「泣き叫ぶ妻子に村中が…」北朝鮮で最も”残酷な夜”

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

ちなみにこのエピソードには、金与正氏が影響力を行使し、追放された友人すべてを復帰させたとの後日談がある。

それと比べ、悲惨なのは一般庶民だ。昨年10月には金与正氏を批判した黄海南道(ファンヘナムド)の住民2人が保衛部に逮捕され、その家族までが行方不明となる事件が最近発生した。彼らが悲惨な運命を辿ったことは想像に難くない。

(参考記事:北朝鮮女性を追いつめる「太さ7センチ」の残虐行為

一方、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は今月12日、北朝鮮の駐クウェート大使代理を務め、脱北して2019年に韓国に入国したリュ・ヒョヌ氏のインタビューを公開。リュ氏はその中で、金与正氏の夫について語っている。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

リュ大使は2014年9月、「金正日の金庫番」として知られる義父・全日春(チョン・イルチュン)元朝鮮労働党39号室長と共に、金正恩氏の生母である高容姫(コ・ヨンヒ)氏の墓参りに行ったときに、金与正氏の家族とばったり出会った。

彼は、金与正氏の夫と思しき人物を目撃した。以下、リュ氏の証言だ。

「金与正氏は(私の)義父に『母の墓所を訪ねてくれてありがとう』と挨拶をしました。義父が(金与正氏に)家族を紹介してくれて、彼女と握手をして挨拶を交わしました。彼女の隣に身長180センチ近い美男子が立っていました。彼女の結婚式の写真で見た夫と同一人物であることに気づきました」

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

リュ氏によると、金与正氏と夫との馴れ初めは、金日成総合大学特設班での出会いで、2014年9月当時、彼は、朝鮮人民軍総政治局組織部軍団指導課の副部長として勤務していたとのことだ。

金与正氏の夫も、いずれ公式の場に現われることがあるのだろうか。その可能性があるが、微妙な点がひとつある。北朝鮮では実質的に、離婚が「違法」とされている。しかしもちろん、金王朝の一員なら別だ。いったんお披露目した夫と離婚するなど、国民の目を考えればとうていできない。

(参考記事:機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇

父である金正日氏は、秘密裏に数多くの愛人を持った。しかし男尊女卑の強く残る北朝鮮では、いかに金与正氏といえども、父を真似ることはできない。

だから夫の公開には慎重になるだろうし、同時に彼にまつわる情報は今後しばらく、うっかり触れると危険な「機微情報」に分類され続けるのではないだろうか。