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先月末の大雨で、北朝鮮と中国の国境を流れる鴨緑江流域では、深刻な被害が発生した。あまり報じられていないが、鴨緑江とは反対に、中朝国境を日本海に向けて流れる豆満江流域でも被害が発生したようだ。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)では、田畑を水に流された女性が絶望のあまり、自ら命を絶つ事件が起きた。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

市内に住む50代の女性は、3年前まで市場で商売をして生計を立てていた。会寧は国境の町で、合法・非合法の輸出入が盛んな街だった。ところが2020年1月、突如として国境が封鎖され、商売が難しくなった。

そこで息子とともに畑を耕すようになった。より儲けるために、ヤミ金業者からカネを借りて、畑を広げた。

「農業をするなら、種や農薬などを買わなければならないが、それらすべてを揃えるカネを持ち合わせていない人は、ヤミ金業者から借りるしかない」(情報筋)

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彼女は、体調が悪くても一日たりとも休まず畑に出て、全身全霊を傾けた。様々な作物を育て、より収穫を増やすのが目標だった。

「今年は豊作になりそう」そんな期待を抱き、膨れ上がる借金もなんとか返せるだろうと前向きに考えていた。それが、先日の洪水で文字通り水の泡と消えてしまったのだ。

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絶望した彼女は、家に閉じこもって何日も寝られぬ夜を過ごしていた。そして今月3日、息子がしばらく家を留守にした間に、彼女は農薬を2瓶も飲んで自ら命を絶った。

「1瓶でも即死する農薬なのに、2瓶も飲んで、生き返るはずがない」(情報筋)

薬品名は不明だが、相当強力なものだったようだ。彼女の死は、被災者の絶望の深さを示しているというのが、情報筋の話だ。

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事件のことはあっという間に市内全域に広がり、市民からは「ただでさえ生活が苦しいのに、さらなる深みに陥れるなんて」と、人間の力ではどうしようもない災害を嘆いた。

(参考記事:「最悪の状況だ」金正恩の経済失敗に漏れるホンネ

一方で情報筋は、国の無策を批判した。

「ここ(北朝鮮)では、水害で田畑がだめになってもまともな支援がないから、人々は自分の力で生き抜くしかない。カネも食べるものもなく、貧乏人に転落すれば這い上がるのは本当に難しい。だから今回のように自ら命を絶つ事件がしばしば起こる」(情報筋)

市民の間からは「今年は凶作だ」との嘆き声が上がり、ひどくなる一方の生活苦にため息を付くばかりだという。

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