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「北南関係は、これ以上、同族関係、同質関係ではない敵対的な両国関係、戦争中にある両交戦国関係に完全に固着された。」

北朝鮮の金正恩総書記は昨年末の朝鮮労働党中央委員会第8期第9回総会拡大会議で、「われわれを『主敵』と宣布して、外部勢力と結託して『政権崩壊』と『吸収統一』の機会だけをうかがう一味を和解と統一の相手に見なすのは、これ以上、われわれが犯してはならない錯誤」として、朝鮮半島の統一に関して韓国と話をしても無駄だとした。

(参考記事:「韓国とは統一実現しない。戦争なら全土を平定」金正恩氏、党総会で宣言

これらの発言に基づき、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)で行われる思想教育の内容にも変化が生じている。しかし、あまりもの大転換に、兵士たちは当惑しているようだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

両江道(リャンガンド)の軍内部情報筋によると、当局は「韓国がわれわれと同じ民族で、同胞であるとの認識を完全に消す」ように教育を行うようになった。

毎日午前9時から2時間行われる思想教育の時間「政治上学」や集中講習、講演会、上学準備検閲(朝礼)など、兵士が集まる機会があるたびにこんな話が繰り返されている。

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「平和統一への幻想を持つな」
「南朝鮮(韓国)ではなく傀儡(かいらい)と呼べ
「絶対に統一の道を共に歩めない相手」

確かに今までも、韓国は戦争になれば戦うべき敵だとの教育は行われていた。しかし、「平和統一など夢にも思うな」「民族、同胞、平和という表現を使うな」「韓国は絶対に変化しない敵」などといった徹底した教育が始まったことに、兵士たちは首を傾げている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の幹部によると、急に持ち出された「韓国主敵論」は、ロシアのウクライナ侵攻に対する分析に基づくものだという。

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当局は金正恩氏の指示に基づき、ロシアがなぜウクライナ相手に苦戦を強いられているのかについて分析した。すると、「ロシアとウクライナは同じ民族」というロシアの教育に原因があるとの結果が出たという。

「もし戦争が起きて、ロシアの兵士のようにわが国(北朝鮮軍)の兵士が『韓国はわれわれと同じ民族だから』と引き金を引くことを躊躇すれば、おおごとになりかねないと懸念している」(幹部)

若者の間に韓国文化が急速に広がっていることも一因だという。厳しい取り締まりにも関わらず、北朝鮮には韓流ドラマや映画、K-POP、韓国製品に夢中になり、韓国に憧れを持つ若者が非常に多い。当局としては、絶対に法っておけない状況だ。

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(参考記事:北朝鮮の女子高生が「骨と皮だけ」にされた禁断の行為

韓国・又石大学国防学科のキム・ミンギュ教授は、ロシア軍が侵攻6日目に進撃を止めてしまったのは、ウクライナ人が同じ民族だという意識によるものだとし、その後に「ウクライナは他の民族、他の国である」との教育を受けた35歳以上の予備役兵やワグネルの兵士が前線に投入されたと述べた。

そして同教授は、北朝鮮は「韓国は別の国」だという教育を昨年から行っていると指摘した。

「2022年8月、金与正(キム・ヨジョン)氏が韓国を『傀儡』『不変の主敵』などと呼び、2023年から従来の南朝鮮ではなく『大韓民国』という呼称を使い始め、韓国は別の国という認識を植えつけるための心理戦を始めた。国民の間にもある程度、『韓国は敵』という認識が広がったと判断して、金正恩氏は昨年末の党中央委総会と新年の施政演説で、韓国全体を主敵と規定する対南路線を発表したと見られる」

ただ、北朝鮮当局は韓流関連の「犯罪」を、重罰を持ってしても抑え込めていない。中には「韓国のもの」であると意識すらせずに受け入れられているものも少なくないほどだ。

最高指導者がいくら「韓国は敵だ」と連呼したところで、それだけで北朝鮮国民の意識が変化するとは思えない。

(参考記事:北朝鮮の男女30人「腰振り狂宴」で吊し上げの刑