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かつての北朝鮮において、食肉は各地に存在する「ブタ工場(養豚場)」「鶏工場(養鶏場)」などで飼育、屠畜されて各地に配給されていた。しかし、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」を前後して、それら施設の多くが稼働停止に追い込まれた。

そのような状況を変えようと思ったのだろう。金正恩総書記は2012月11月、江原道(カンウォンド)の洗浦(セポ)に畜産の一大拠点「洗浦地区畜産基地」を作る計画を立ち上げ、2017年10月に完工したと伝えられる。が、その後は国営メディアに取り上げられることもほとんどなく、現状どうなっているかは不明だ。

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現在、市場で流通している食肉は、個人宅で育てられた家畜を、屠畜を専門に引き受ける個人業者を経て出荷されたものだ。自宅の裏庭で屠畜を行い、市場や商店に売りに出すのだ。当局は、このような業者に対する実態調査を始めたと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。その目的は「税金」だという。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋は、高原(コウォン)郡人民委員会(郡庁)が幹部を村々に派遣して、食肉生産の実態調査に乗り出したと伝えた。

通常、市場で商売をする場合には、市場管理所に管理費(場所代)を支払う。法で定められた税金制度が存在しない北朝鮮で、この場所代は、地方政府の大きな収入源となっている。

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場所代を払うほどの儲けがない零細商人は、市場の周辺や裏路地で風呂敷を広げて商売をするが、場所代の取りはぐれを嫌った当局の執拗な取り締まりに苦しめられる。安全員(警察官)が現れるや、商品をしまい、あっという間に逃げ去る彼らのことを「イナゴ商人」と呼ぶ。

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同様に管理費を支払っていないのが、自宅で屠畜を行う人々だ。イナゴ商人より裕福だが、そもそも市場での商売ではないため、市場管理所に登録をしておらず、当然、場所代は一銭も払ってこなかった。

その調査を行って登録させ、利益の1割を地方政府に納めさせるのが、今回の実態調査の目的だ。納付は月末で、幹部がわざわざ徴収に出向く。

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郡内の徳寺洞(トクサドン)には現在、5人の業者が存在するが、人口約19万人の郡全体を調査すれば、さらに多くの業者が見つかるものと見られている。そこまでするほど、地方政府の財政が厳しいということだ。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の別の情報筋は、今月から端川(タンチョン)市内でも、実態調査が始まったと伝えた。

一部は「自分の家でブタをさばいて食肉商人に卸すだけなのに、なぜ市場の場所代を払わせられるのか」と抗議するが、幹部は「屠畜は個人宅で行っても、肉は地方政府が管理する市場で販売されるので、毎月1割の管理費を支払え」と迫るという。

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肉を販売しているのは市場の商人だけではない。地方都市には、地方政府の名義を借りて商売を行う「なんちゃって国営精肉店」が2〜3軒存在する。人民委員会(市役所)商業管理所所属との看板を掲げているが、経営者は利益の3割を納めることで、農村動員などで一時的に市場が閉鎖されている期間中であっても、問題なく営業できる。

今回登録させられた業者も、これと同じように人民委員会の看板を掲げることとなったが、随分と不満のようだ。肉を買ってくれる商人が農村に動員されれば、その間肉は全く売れず、売上は下がるのに、場所代はしっかり取られるからだ。

なお、いずれも販売しているのは主に豚肉だ。農耕に使われる牛の食用は禁じられており、その密売に関わった日には、自分たちが肉の塊にされてしまう。

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