北朝鮮の社会主義愛国青年同盟(青年同盟)は、14歳から30歳までの人が加入する、旧ソ連のコムソモールに倣った組織だ。その前の8歳から14歳までは、朝鮮少年団(ピオネールと同様の組織)に加入することになっているが、そのシンボルを巡りちょっとした騒動になっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、先月から青年同盟のメンバーも「赤いネクタイ」をすることになったと伝えた。この赤いネクタイとは、朝鮮少年団が着用するスカーフまたはネッカチーフのようなものだが、青年同盟も着用せよという指示は、金正恩総書記によって下された。
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しかし、これが反発を呼んでいる。子どもにとっては自慢となる赤いネクタイだが、思春期の若者にとっては恥ずかしいものだからだ。
親たちは、なんとかして子どもを朝鮮少年団に入れようと、多額の寄付金を払うなど、様々な努力をする。赤いネクタイができない子どもは落ちこぼれ扱いされるためだ。
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ところが、初級中学校(中学校)を経て、高級中学校(高校)に上がると状況は一変する。
いつまでも赤いネクタイをしていると落ちこぼれ扱いされる。青年同盟に入って、赤いネクタイを外し胸に輝く金正恩バッジをつけることが目標となる。それなのに、子どもや落ちこぼれの象徴である赤いネクタイを再びつけよと言われた若者やその親は、呆れ返っている。
平安北道(ピョンアンブクト)の住民も、同様のリアクションを示している。現地の情報筋は、今回の指示が高校生と大学生を区別しやすいためだと聞いていると述べた。双方の制服は、白いワイシャツに灰色のズボンであるため、たしかに区別がしづらい。だが、それ以上の理由があったようだ。
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「大学生と高級中学生の制服が似ているため、外国人観光客に、体の小さい少年団に見せようとしているのではないか」(情報筋)
プライドが高く、ネガティブな情報が海外に漏れることを異常に嫌う北朝鮮は、外国人の目につくようなところをきれいにすることがしばしばある。「栄養状態が悪いから体が小さい」などといった情報を流されるのを嫌がってこのような措置を取ったことはじゅうぶん考えられる。
(参考記事:コロナ禍の下「公園造成」予算を搾り取られる北朝鮮国民から怨嗟の声)しかし、「いい歳なのに未だに赤いネクタイだなんて」という国民感情については、全く無視しているようだ。上からの押しつけを極度に嫌う北朝鮮の若者だが、今回の指示にも何らかの形で抵抗するだろう。