北朝鮮の首都・平壌は、北朝鮮国民とて自由に出入りできるところではない。
居住している地域の外に出るために必要な通常の「旅行証」(国内用パスポート)に加え、承認番号付きの特別な証明書を、平壌市の境界線上にある哨所(検問所)で提示しなければならない。また、感染症が蔓延した場合などは、平壌の出入りが一切禁じられる。
しかし、抜け道も存在する。平壌に隣接する平城(ピョンソン)から、山道を通って「密入国」ならぬ「密入市」することも可能だ。これを問題視したのだろう。当局は、平壌市を高圧電線で囲うよう指示を下した。平壌のデイリーNK内部情報筋は伝えた。
当局は今年2月11日、首都防衛司令部、国家保衛省(秘密警察)、社会安全省(警察庁)に、平壌市との境界に高圧電線を設置せよとの指示を下した。
より具体的には、境界線付近の平野や住宅地を除き、ひとけが少なく地方住民の密入市ルートとなっている地域を中心に、3300ボルトの高圧電線、変電設備、監視カメラを設置せよというものだ。さらに、招所も増強し、平壌市警戒勤務に万全を期すとのことだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面一連の措置は、深刻化する経済難の中、犯罪が多発していることを受けた措置と考えられる。また入市規制を行っていたはずの平壌で昨年5月、新型コロナウイルスの感染者が発生したこととも関係あるだろう。
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当局が、平壌の守りをガチガチに固めるのは、「革命の首脳部の安全」(指示文)がかかわっているからだ。金正恩総書記やその一家の安全が、北朝鮮で何よりも優先されるべきこと。万が一、金正恩氏の身辺に何か問題が起きたとすれば、警備担当者の間で粛清の嵐が吹き荒れることは想像に難くない。
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平壌の安全に関する事柄は、金正恩氏の批准する1号課題だ。指示が下された直後の2月中旬から工事が始まり、現在も続けられている。
今回の高圧電線設置の根本的な背景には、北朝鮮が新型コロナウイルスの平壌への流入を防ぐために、警備を強化したにもかかわらず、無断侵入が相次いで発生したことがある。許可証を持たず平壌に入り摘発された人を取り調べた結果、人通りの少ない山道を通ってきたことがわかり、高圧電線の設置計画が浮上した。
現在、工事は首都防衛司令部傘下の3つの工兵大隊と建設専門部隊である7総局の2つの旅団が区間を分けて進めており、現在は高圧線を接続、固定するためのコンクリート柱の設置作業が行われている。この柱は高さ6メートルで、北朝鮮国内で制作されたものだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面当局はこの計画を、2025年までに完了させる予定だ。
中国との国境に面した地域でも、同様の施設を建設中だが、完成予定を過ぎても一向に完成する様子はない。ただ、1400キロにも及ぶ国境線と比べ、平壌市を取り囲む境界線は短いため、意外と早く工事が終わる可能性も考えられる。
このようなルートを通じて、平城から様々な物資が持ち込まれていたのだが、そこが通れなくなると、市場への商品供給が減少することになる。
(参考記事:いつまで経っても終わらない北朝鮮の国境コンクリート壁建設)