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北朝鮮で7月から始まったトウモロコシの収穫。依然として食糧難が続く中で、庶民にとっては大切な命の糧だが、トウモロコシの用途は様々だ。

韓国の東海岸から北朝鮮にかけて、昔からトウモロコシは酒の原料として使われてきた。韓国の江原道(カンウォンド)では、トウモロコシでできたマッコリが作られており、北朝鮮を代表する酒の一つ、平壌焼酎の原料にもトウモロコシが含まれている。

北朝鮮の農民は毎年のように密造酒を作っているが、当局はまた今年も取り締まりに乗り出した。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

平安南道当局は8月10日、トウモロコシの収穫期を迎えて密造酒を作る行為が横行することを懸念して、平安南道安全局(県警本部)に取り締まりに当たるよう指示した。

「収穫されたばかりのトウモロコシが出回るや否や、買い漁って密造酒を作る住民がいる。一方では餓死しそうで苦しんでいる人々がいるというのに、これはいったい何事か」というわけだ。

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密造酒の取り締まりは、道の反社会主義・非社会主義連合指揮部が行ってきた。韓流コンテンツの売買、消費、占い、性売買など社会主義にそぐわない、または反すると当局が考える行為を取り締まる組織だが、指揮部はそれら行為を取り締まるのに精一杯で、密造酒の摘発にまで手が回らず、安全局に指示が下されたということだ。

当局はまた、農民が充分に熟れていないトウモロコシを畑から盗み、密造酒業者に売り渡す行為が度を越しており、大きな流れになっているとして、密造酒の醸造に関わった者をいち早く摘発し、見せしめとして処罰せよとしている。

指示を受けた安全局は、市や郡の安全部(警察署)に密造酒の取り締まりに当たらせている。家宅捜索で酒を醸造する機械や40キロ以上のトウモロコシが発見されれれば、すべて没収して、人民委員会(市役所)の糧政課に引き渡せとの指示も下された。

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だが、業者の方が一枚上のようだ。スパリゾートで有名な陽徳(ヤンドク)では、大々的に密造酒が作られているが、どこから漏れたのか取り締まりが始まるとの情報を得た人々は、機械とトウモロコシを隠したうえで昼間は山などに潜み、夜遅くなってから帰宅している。

「今回ひっかかれば、機械もトウモロコシもすべて没収され、下手をすれば教化所(刑務所)送りになる。大手の密造酒業者も、空気を察知して、家から逃げて身を隠している」(情報筋)

密造酒取り締まりのそもそもの理由は「穀物を無駄にするから」というものだが、取り締まりは、逆に穀物を無駄にする結果を生んでいる。

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陽徳の人々の多くは、豚を飼って生計を立てている。その餌として使われているのは、トウモロコシの密造酒の絞り粕だ。密造酒が取り締まられると、餌が入ってこなくなり、結局高いカネを払って人間の食べるトウモロコシを買って豚に与えなければならなくなるのだ。

トウモロコシの消費が増えると価格が上昇し、ただでさえ懐事情が厳しい庶民をさらに苦しめることになる。

北朝鮮当局が密造酒を忌み嫌うのは、穀物の無駄と考えているからだけではない。質の悪い密造酒が出回り、多数の死者を出す事件が起きていることも関係している。

2019年3月、軍事境界線にほど近い開城(ケソン)にある、開城松岳食料工場の「松岳(ソンアク)焼酎」のラベルを貼った密造酒が大量に出回り、亡くなったり失明したりする人が続出した。ラベルは、国営の印刷工場が印刷した偽物だった。

この事件には金正恩総書記も激怒し、密造酒の売買に関わった数人が公開処刑されたとの情報がある。

(参考記事:最愛の側近の息子も犠牲か…金正恩氏「ニセ焼酎」で公開処刑

それ以前に北朝鮮では、酒を飲んで大騒ぎすることを「スルプン」(酒風)と呼んで、社会悪扱いされている。酒に酔った上でのトラブル、舌禍も後を絶たない。

(参考記事:北朝鮮元兵士が酒に酔って板門店勤務の内情を漏洩