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北朝鮮の各地に存在する「2号倉庫」。これは、有事の際に使用する軍糧米などの食糧を備蓄しておく倉庫だ。1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころ、人々が飢えに苦しみ死んでいく中でも、故金正日総書記は2号倉庫を開けて民間人に食糧を配給せよ、と指示を出すことは一度たりとももなかった。一方で、金正恩総書記は、2019年に開放命令を出したことがある。

2号倉庫の他にも「5号倉庫」というものが存在する。こちらは災害時に備えて食糧を備蓄しておく倉庫で、食糧が不足した場合には、2号倉庫より先に開放される。苦難の行軍以来最悪の食糧難と言われている現在、5号倉庫が開放されたとの情報が入ってきた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、朝鮮労働党咸鏡北道委員会(道党)が先月23日、道内の主要企業所の従業員の食糧配給を巡り緊急会議を開き、5号倉庫を開放し、先月25日から配給を行ったと伝えた。

国家経済計画の達成に向けた任務を背負っているこれら企業所だが、従業員はゼロコロナ政策で妻が市場で商売をして生計を支えるのが難しくなり、世帯収入が激減してしまった。そしてまともな食事が取れなくなり、空腹で出勤できないという従業員が増え、生産に支障をきたすほどになっていた。

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道党は、食糧問題の解決に頭を抱えたが、地方ではとても背負いきれないと判断し、中央に報告した。そして、国家計画達成のため、5号倉庫にある食糧を、清津(チョンジン)製鋼所、金策(キムチェク)製鉄所、城津(ソンジン)製鋼所、吉州(キルチュ)パルプ工場などの企業所の従業員へと配給することにした。

配給は「国営米屋」である糧穀販売所で行われるが、トウモロコシは1キロ当たり1200北朝鮮ウォン(約19円)、コメは同2300北朝鮮ウォン(約37円)という、市場価格の半分以下の価格で販売した。上限は1世帯あたり、それぞれ20キロと5キロだ。

企業所の工場生産部の判子が押された書類を持った労働者たちが、一斉に糧穀販売所に押し寄せ、大騒ぎとなり、横入りでけんかになる一幕もあったという。ただ、店は販売開始からわずか2日で店を閉めてしまい、予定量の2割しか配給できなかったとのことだ。

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配給が再び止まってしまったことは、道党を通じて中央に報告された。すると中央は早急に配給を再開するので、第1四半期が終わる今月末まで、労働者の出勤率を100%まで引き上げ、主要生産企業所をフル稼働させよとの指示を下した。

いずれにせよ、安価に配給が受けられたことで、対象となった企業所の従業員とその家族は非常に喜んでいるが、対象外となった人々からは、「同じように国の経済に貢献しているのに自分たちはなぜ配給が受け取れないのか」と不満をもらしたという。

また、配給はノルマ達成のためのブラック労働との引き換えだ。平安南道(ピョンアンナムド)の工場でも、配給が行われたのだが、残業続きの毎日で、商売もできなくなり、むしろ収入が減ったと不満の声を上げる人もいる。

(参考記事:北朝鮮の重要工場、食糧配給再開も労働者から逆に不満の声