朝鮮人民軍(北朝鮮軍)は現在、冬季訓練を行っている。例年12月1日から翌年の3月末までの長期にわたり行われる訓練だが、その真っ只中の1月に「軍紀確立評価の月」という、検閲(検査)を行った。過去にはなかった異例のことだ。
デイリーNKの軍内部情報筋によると、朝鮮人民軍総参謀部は、軍紀が乱れていないか実態を把握するための調査を各部隊に対して抜き打ちで行った。その背景には、冬季訓練に臨む将兵の態度の問題があるというのが情報筋の説明だ。
「新年は訓練場で迎えよ」という命令が下されたにもかかわらず、それがまともに守られなかったのだという。
「先月28日午後、総参謀部が国防省検収局、水路局指揮部直属の区分隊の訓練場に対して緊急検閲(抜き打ち検査)を行ったところ、軍官(将校)、下戦士(二等兵)の9割が軍服ではなく、製作軍服(私服)を着用していたことが深刻な問題となった」(情報筋)
なお、この区分隊に対しては、1月の総合訓練評価で最低点が付けられてしまった。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面国内の状況が苦しいときほど引き締めを図るのが北朝鮮である。民間人の若者のヘアスタイル、ファッション、さらには言葉遣いまで「非社会主義現象」、「南朝鮮(韓国)資本主義遊び人風」などと称して、取り締まりを行っている。
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若い将兵の間でも同様の現象が起きている。勤務中の韓流ドラマを見たり、韓国風のダンスを踊ったりして摘発した事例が確認されているが、私服を着ておしゃれを楽しむなど、北朝鮮の考える理想の軍人像からは遠くかけ離れた、軍紀紊乱行為であるということだ。
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私服に対する総参謀部の抜き打ち検査が行われ、部隊周辺の市場では、密売されている正規の軍服の価格が高騰している。下戦士の軍服の場合、1着がコメ7キロから10キロ分で買えたのが、現在では20キロにまで上がったという。
「質が悪くとも全く手を加えていない規定に沿った軍服を買い求める下戦士が急増し、(平壌市郊外の兄弟山<ヒョンジェサン>区域の)西浦(ソポ)市場、(西城<ソソン>区域の)下新(ハシン)市場では、規定の軍服の値段が2倍に上がった」(情報筋)
とりあえず検閲を問題なくやり過ごそうということだろうが、上から押し付けられるものを「ダサい」と嫌がるのが今の北朝鮮の若者の風潮だ。ほとぼりが冷めれば、またおしゃれを楽しむようになるだろう。
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