金正恩が忌み嫌う「禁断の替え歌」を一斉取り締まり

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韓国にはかつて、歌うことを禁じられた歌があった。1933年9月13日の東亜日報は、朝鮮総督府が、「アリラン」など4種類のレコードを、治安妨害の容疑で発売禁止にしたと報じている。同月30日には、開城(ケソン)市内の蓄音機店から、これらレコードが押収されたとも報じている。

禁止曲の歴史は独立後も続いた。特に、1970年代の朴正煕政権時代にはひどかった。イ・グミの「脚長ミスターキム」は「背が低い朴大統領を不愉快にさせる」、ペホの「0時の別れ」は「0時に別れれば、夜間通行禁止令違反になる」などといった馬鹿げた理由で、禁止曲に指定された。

これらはその後に解禁されたものの、禁止曲というジャンルは、1996年10月に憲法裁判所が、政府による音楽の事前審議(事実上の検閲)に違憲判決を出すまで存在し続けた。

一方の北朝鮮。韓国のK-POPが禁止曲であるのは言わずとしれた事実だ。ただ、歌うことを禁じられた歌はそれだけでない。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、北朝鮮当局は最近、全国の社会主義愛国青年同盟(青年同盟)に対して、出どころが不確かな歌を歌ったり、思想性と革命性の高い歌を歪曲して歌ったりする現象との闘争を強く繰り広げることに関する指示を下した。言い換えると「替え歌との宣戦布告」だ。

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当局は「若者たちの間で、朝鮮労働党の要求と意図を肌で感じられず、時代と全く合わない歌を勝手に歪曲して歌うかと思えば、出どころが明確ではない歌や退廃的な歌を携帯電話に保存したり、手帳に書き留めたりして歌う現象が起こっている」と指摘した。

当局は明示的には言わないが、替え歌の内容がいずれ金正恩総書記を嘲笑するものへとエスカレートし、最高指導者と体制の権威が損なわれるのを警戒しているのだ。

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今回の指示に伴い、各道、市、郡の青年同盟は、糾察隊(取り締まり班)を立ち上げ、先月末から通りや住宅地に派遣して、若者の携帯電話、ノート、手帳などを検査している。

先月25日から27日までの3日間で、清津(チョンジン)市内では、10人の若者が、K-POPを携帯電話に保存していたことで摘発された。彼らには、思想教養(思想教育)及び処罰規定に基づき、3日間批判書を書き続け、20日間の強制労働を行う処分が下されたが、幸い重罰は免れたようだ。

(参考記事:「再び立ち上がれない」北朝鮮大学生に”見せしめ重罰”の過酷な運命

一方、北朝鮮の革命歌の替え歌の歌詞を手帳に書き留めていた高級中学校(高校)の生徒20人も摘発され、こちらも数日間に渡って批判書を書き続ける処分を受けた。

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この手の替え歌取り締まりは、過去にも度々行われている。今年1月には「社会主義はわれわれのもの」という革命歌を「われわれは要らない」などと替え歌にして歌った朝鮮社会主義女性同盟(女性同盟)のメンバーが摘発されている。

替え歌すら自由に歌えない状況に「息をするのも大変だ」と不満を吐露する若者もいると、情報筋は現地の状況を伝えている。

(参考記事:「禁断の歌」熱唱した北朝鮮女性、連行され闇から闇へ

北朝鮮庶民の率直な心情や諧謔が込められたこれら替え歌。いくら取り締まっても消えることはなく、これからも歌い継がれることだろう。

(参考記事:鉄条網を越えて駆けつける~♪北朝鮮で流行する「脱北替え歌」