「禁断の歌」熱唱した北朝鮮女性、連行され闇から闇へ

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北朝鮮の朝鮮社会主義女性同盟(女性同盟)のメンバーが、光明星節(2月16日、金正日総書記の生誕記念日)を祝うイベントの準備中に、保衛部(秘密警察)に摘発される事件が起きた。その容疑は、マスク未着用と替え歌だった。

咸鏡北道のデイリーNK内部情報筋によると、事件の概要は次のようなものだ。

咸鏡北道女盟は先月22日、道内のすべての初級団体(下部組織)に対して、光明星節を迎えて忠誠の歌の集いを開くので準備せよとの指示を下した。同時に、コロナ感染のリスクを考慮して、防疫規則を徹底して守った上で歌うよう指示した。

清津(チョンジン)市のある初級団体のメンバーらは先月27日、あるメンバーの家に集まって、マスクを付けたまま歌を歌っていたのだが、息が詰まり、声がよく出ないのでマスクを外して練習していた。その様子を、準備状況を確認するためにやって来た、女盟のイルクン(幹部)に見られてしまったのだった。

問題はそれだけではない。今回練習していた曲は「社会主義はわれわれのもの」というもので、メロディは昭和のスポ根アニメのテーマソングのような感じだ。

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彼女らは「他の誰が捨てようとわれわれは捨てない」という歌詞を「誰が社会主義をくれと言ったのか、くれと言ったことはない」、「われわれは要らない」などと替え歌にして歌ったことが問題になった。

その様子を見た女盟のイルクンは「マスクを付けよ」との言葉だけ残して引き上げたが、その場にいたメンバー全員は後日、洞事務所(末端の行政機関)に呼び出され、「社会主義はわれわれのもの」を半日歌わされ続けるという罰を受けた。さらに4ページ分量の「人民防疫規定細則」を暗唱させられた上で、個別に幹部の取り調べを受けて、深夜になってからようやく帰宅が許された。

案件は町内の保衛部に通報され、区域の保衛部は、替え歌を熱唱していた女性一人を連行、残りのメンバーに対しては動向検討(思想調査)の対象としているとのことだ。連行された女性がいかなる処罰を受けたかは、杳として知れない。非常に運が悪ければ、管理所(政治犯収容所)送りか、もっとひどい目に遭わされることもありうるだろう。

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「社会主義はわれわれのもの」は、替え歌の定番レパートリーのひとつで、「社会主義はお前らのもの」などと歌詞を替えて歌われているようだ。庶民の他愛のない冗談だが、北朝鮮当局はそれを、「マルパンドン」(言葉の反動=反政府的言動)として取り締まっている。庶民が諧謔で溜飲を下げることすら、許さないのだ。

(参考記事:北朝鮮で「危険な替え歌」流行か…体制や最高指導者を揶揄

特にコロナ禍の現在、当局は些細なことでも反動思想文化排撃法で厳しく取り締まっている。ちょっとした一言が、命取りになりかねないのが、北朝鮮という国だ。

(参考記事:北朝鮮の頭が良すぎる学生たち「禁断の発言」で処刑