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韓国の脱北者団体が、大型の風船に入れて飛ばしたビラと物資に新型コロナウイルスが付着していて、そこからコロナ感染が広がったーー。

厳しい統制にも関わらず、コロナや他の伝染病の感染拡大を抑え込みできていない北朝鮮当局は、最近になってこの手の「コロナ韓国起源説」の宣伝に躍起だ。軍事境界線から遠く離れ、ビラが届くことなどまずない中国国境沿いの地域でも、脱北者を口汚く罵る思想教育を行っている。

(参考記事:「禁断のビラ」を見てしまった北朝鮮軍人家族の残酷な末路

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、会寧(フェリョン)市保衛部(秘密警察)は11日、市民を対象にした政治講演会を開いた。

その場では、脱北者を「死んでも許されざる民族の反逆者ども」「育ててくれた(朝鮮労働)党の恩を知らない嘆かわしい人間の汚物」「米帝と南朝鮮(韓国)の傀儡一味の先兵となり、わが共和国(北朝鮮)を崩そうとありとあらゆる謀略に誰よりも熱心なクズども」などと、激しい口調で非難。

その上で、脱北者団体は北朝鮮を非難するビラと、ウイルスを付着させた物資を飛ばしていると主張し、「それらを触れば内臓が腐る」「食べ物を口にすれば口に水ぶくれができて膿む」などと言った子供だましの悪宣伝を繰り広げている。

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当然のことながら、市民はそんな話を全く信用していない。旧態依然としたレトリックもさることながら、韓国に詳しい人が多いからだ。

韓国に入国した約3万3800人の脱北者のうち、およそ6割が咸鏡北道出身だ。特に、会寧や穏城(オンソン)、茂山(ムサン)など中国との国境に接した地域の出身者が非常に多い。これら地域では、韓国に行った家族と連絡を取り合っている人も少なくない。

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「保衛部が南朝鮮への悪宣伝をしても、国境に接した地域の住民は(真実を)よく知っている。故郷に父母きょうだいがいるのに、南朝鮮に行った人がなぜ悪性ウイルスをわが国に送るのか、話にならないと言っている」(別の情報筋)

取り締まりの強化で以前ほどではないが、韓国に住む家族と携帯電話で通話することも珍しくない。つまり、北朝鮮で最も韓国の現状に詳しい人々が多く住んでいるのが、会寧を中心とした地域なのだ。程度の低い陰謀論に騙される人などまずいないだろう。

今回の講演会に参加させられた、ある会寧市民は次のように語っている。

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「近頃は暮らしがあまりにも苦しい。病気で空腹の人が何の贅沢を言うだろうか。下の村(韓国)に行った人々が、わが国(北朝鮮)の苦境を知って、様々な方法で金品を贈ってくれているのに、それのどこが悪いのか。国が解決できないことを、彼らがタダで解決してくれているのだから、ありがたく思うべき」

また、講演会の内容に同調するフリをして、脱北者を口汚く罵った人も会場を後にすると、「脱北して韓国に住む家族を持つ人が羨ましい、うちにはなぜそんな家族がいないんだ」とため息をついていたとのことだ。

脱北者の多くない地方で同様の講演会を開いても、市民の反応は概ね似たようなものになるだろう。韓流コンテンツを通じて、韓国の実情は概ね知られており、韓国製品は高級製品として扱われ、若者は韓国風の言葉遣いを真似する。

「南朝鮮の子どもたちは、缶を持って米軍相手に物乞いをしている」といった類のプロパガンダは、もはや通じないのだ。

(参考記事:15年やっても効果ない「韓国語禁止令」を繰り返す北朝鮮