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北朝鮮の対外向けメディア「朝鮮の今日」は、朝鮮戦争の休戦直前だった1953年3月5日、後に最高指導者となる金正日氏が詠んだという、「肖像画」という詩を掲載している。

今日は初めて見る元帥服を着た肖像画
とても嬉しくて挨拶すると元帥様が明るく笑っていらっしゃる
一日も早くお会いしたいという私たちの心がわかっていらっしゃるかのように
勝利の日はやってきて私たちは勉強に励みます

金正日氏が本当にこの詩を詠んだのか真偽は定かでないが、当時、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の占領地域では、ソ連のスターリンの肖像画と共に、金日成将軍の肖像画が掲げられていたことは確かだ。ただ、日本の植民地支配下で神格化されていた御真影(天皇の写真)のように肖像画が扱われるようになったのは、金日成氏が党内の粛清を終え、個人独裁体制を確立した1970年代以降と思われる。

1974年に定められた北朝鮮の真の憲法とも言うべき「党の唯一思想体系確立の10大原則」(現在は党の唯一領導体系確立の10大原則)の第3項の6には、次のようなものがある。

敬愛する金日成同志の肖像画、石膏像、銅像、肖像徽章、首領様の肖像画を戴いた出版物、首領様をかたどった美術作品、首領様の現地教示板、党の基本スローガンなどを丁重に奉じて扱い、徹底して保衛しなければならない。

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これらの実践は、「モシダ」(奉じる)という動詞の名詞形から「モシム事業」と呼ばれるが、今月8日の金日成氏の命日を控え、この事業に力が入れられている。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、当局が「7月8日を迎え、敵どもの蠢動がありえるので、モシム事業を安全に行えるように対策を取り、大雨被害から1号映像(肖像画など)を徹底的に守る対策」を考えるよう指示を出したと伝えた。

朝鮮労働党平安南道委員会(道党)は今月1日、緊急会議を開き、7月を政治保衛的事案を推し進める月に定め、道内のすべての安全(警察)、保衛(秘密警察)部門に、1号映像を命がけで守るように指示を出した。

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特に金日成氏、金正日氏の銅像、革命戦績地、革命史跡地管理所は一瞬たりとも緊張を緩めることなく、モシム事業に力を入れ、敵どもの蠢動を適時に摘発し、叩き潰さなければならないと強調した。

さらに機関、企業所、学校、赤衛隊、赤い青年近衛隊(後者2つは民兵組織)を動員し、革命で勝ち取ったものを守り抜き、人民班(町内会)では5人単位でグループを作り、リーダーを決めて、モシム事業に些細な問題でも起きないようにせよとした。

道党は、水害時に史跡地、史跡碑、1号映像作品、個人宅の肖像画をあらかじめ対比させられるように組織を作り、内部の反動勢力の蠢動がありうることを心に刻み、警戒心を持つように呼びかけた。

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洪水の被害を装って、肖像画などを意図的に毀損する行為がありえるので、些細な動きも見逃さず、注意をして見守るようにも呼びかけた。

これらのモシム事業に関しては、毎日の日課を手帳に記録し、上級者に署名をもらってから提出し、命日の10日後に集めて、大々的な総和(総括)を行うとのことだ。また、各単位の責任者のパトロール状況については、8日の24時までいかに行ったかについて総和を行うという。

今年は、太陽節(金日成主席の生誕記念日)110周年という整周年(5や10で割り切れ、重要とされる年)であるため、政治的な指示を例年に比べて細かくしていると情報筋は伝えた。人民班での警備は今まではなかったが、コロナ鎖国による生活苦に追いやられている中でのこのような作業の強制に、不満を越えて恐怖を感じるとの声が上がっているとのことだ。

「こんなにまで締め付ける理由がわからない、注意に注意を重ねなければ、何が起こるかわからない」(住民の声)

金日成氏と金正日氏に関するものが、宗教の聖典のような扱いを受けているわけだが、万が一それが毀損するようなことになれば、現場の担当者や所有者が責任を取らされるだけではなく、地域全体を揺るがす大騒動に発展し、幹部のクビが飛ぶ事態になりかねないからだ。

逆に、これらを守って命を落とした事例は、美談として扱われる。戦時中に、落下する焼夷弾から御真影を守り抜いて命を落とした人が祭り上げられたのと同じようなものだろう。実際、日本の植民地支配末期に、朝鮮全土の学校などに配布された御真影の扱い方を踏襲したようにも見える。

(参考記事:北朝鮮の水害被災地で「将軍様の肖像画」守り高校生ら13人死亡

だが、ホンネでは、「あんなものどうでもいい」と考えている人も決して少なくないようだ。

(参考記事:北朝鮮の一部で「肖像画」の撤去命令…最高指導者の権威低下か