今月6日から8日まで、北朝鮮の首都・平壌で開催された第6回朝鮮労働党細胞書記大会と、続く9日から11日まで行われた講習会。金正恩総書記の指導の下、党の最末端組織である「細胞」のトップである書記を、全国からかき集めて行われた今回の大会だが、参加が叶わなかった人もいた。
(参考記事:金正恩氏「苦難の行軍を決心した」…党細胞書記大会が閉幕)両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、細胞書記大会に参加するために、遠く離れた平壌に向かう参加者を乗せたバスが事故を起こしたと伝えた。北朝鮮の道路事情の悪さと、最高指導者の呼びかけを厳守すべき緊張感が重なったことによる悲劇だった。
(参考記事:金正恩氏の「高級ベンツ」を追い越した北朝鮮軍人の悲惨な末路)
中央党(朝鮮労働党中央委員会)の先月末の指示に基づき、大会の補充参加者として両江道から20人が選ばれ、大急ぎで平壌に向かっていた最中の事故だった。
追加で選ばれた細胞書記を乗せたバスは、1日午前10時、道庁所在地の恵山(ヘサン)を出発し、6時間かけて約140キロ離れた海抜1335メートルの厚峙嶺(フチリョン)の峠を越えた。ところが、下りカーブで対向車を避けようとしてハンドル操作を誤ってしまい、バスは谷底に転落。3人が死亡し、14人が重軽傷を負った。
(参考記事:【再現ルポ】北朝鮮の橋崩落事故、500人死亡の阿鼻叫喚…人民を死に追いやる「鶴の一声」)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
事故の原因について情報筋は、「時間が遅れて行事(大会参加)の保証に影響を与えてはならないという圧迫感」のせいだと指摘した。
ドライバーは、道党(朝鮮労働党両江道委員会)から、6日から始まる大会の参加に支障なきように参加者を送り届けよと指示を受けていた。つまり、間に合わなければ罰を与えるという意味合いだ。
山道が続き、舗装もまともにされていない両江道の道で、スピードの出し過ぎは命取り。厚峙嶺は山が険しい事故多発地帯だったが、速さを重要視する「速度戦」の考え方が根強い上に、厳しい命令もあってか、ドライバーは相当焦って遅れを取り戻そうとしていたようだ。
(参考記事:また死亡事故発生、北朝鮮「血塗られた大型事故」の歴史)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
ドライバーは、重傷を負って取り調べに応じられないほどの状況のようだが、回復すれば、すべての責任が彼に押し付けられるだろうと、情報筋は見ている。