「金正恩牧場」で肥え太った一家を待ち受ける過酷な運命

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朝鮮半島を分断する軍事境界線にほど近い、北朝鮮・江原道(カンウォンド)洗浦(セポ)。荒野の広がる高原地帯だったこの地に、金正恩党委員長は畜産の一大拠点「洗浦地区畜産基地」の建設を始めた。

5万ヘクタールの敷地に牧草地、畜舎、畜産物加工工場、飼料となる作物を栽培する畑、労働者が住む住宅など数多くの施設を建設するこのプロジェクトは、2017年10月に完工式を迎えた。

そんな洗浦地区のある幹部が、畜産そっちのけで私腹を肥やすビジネスに没頭していたことが発覚、家族もろとも追放されたと、江原道のデイリーNK内部情報筋が伝えた。どうやら処刑は免れたもようだが、一家を過酷な運命が待ち構えているのは間違いない。

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北朝鮮では現在、来年1月の朝鮮労働党第8回大会に向けた大増産運動「80日戦闘」が行われている。洗浦ではそんな中、畜産基地での増産と、冬から来年春にかけて使用する牧草の不足について話し合われていた。その過程で、牧草畑の管理と越冬用の牧草の保管が正しく行われていないとして、責任者である経理部のチョ農産課長が槍玉に挙げられた。

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追及の末、チョ課長は40ヘクタールの土地に撒くための改良種子を国家科学院から受け取りながら、撒くふりだけして、トウモロコシを植えて栽培していたことが判明した。

折からの食糧不足の中、同僚を食べさせるために国の指示に背き、処罰された前例がある。今回もそのような話かと思いきや、単なる貪欲な幹部だったようだ。

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課長は「エサの確保のため」だと弁明したが、収穫したトウモロコシをすべて畜産基地の一部のイルクン(幹部)と山分けしていたことがバレてしまった。課長は、トウモロコシを越冬用の食糧として備蓄する一方で、一部は売り払って石炭を買っていた。

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朝鮮労働党江原道委員会は当然のことながら激怒した。

「洗浦地区は、畜産業の発展させるための構想を示された元帥様(金日成主席)と将軍様(金正日総書記)の業績が宿る場所なのに、そこで悪巧みをするとは許されざる行為だ」

金氏一家が並々ならぬ関心を寄せていたところでの横領。処刑されてもおかしくないほどの重罪だが、党委員会が、チョ課長と一家に対して下したのは革命化(下方)処分だった。一家は炭鉱に追放された。

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真面目にやっていれば革命化処分を解かれて現場復帰する場合もあれば、一生飼い殺しにされる可能性もある。さらに、当局が「思想に重大な問題アリ」とみなせば、教化所(刑務所)や管理所(政治犯収容所)送りなどの厳しい処分も考えられる。労働環境や生活環境の劣悪な炭鉱地帯で、一家は不安に苛まれつつ暮らしていることだろう。

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一方、会議の場では、家畜の死亡が相次いでいる件についても問題提起された。洗浦では今年4〜5月、アフリカ豚熱(旧称アフリカ豚コレラ)が蔓延し、豚、羊、山羊、ニワトリ、カモ、アヒルなど6000に達する家畜が死んだ。

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情報筋は責任者の追及、処分などについて言及していないが、金正恩氏は2016年、管理不備を理由に、大同江スッポン工場の管理人を銃殺した「前科」がある。洗浦地区の関係者は、当面の間枕を高くして寝られないだろう。

(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導