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北朝鮮北部、両江道(リャンガンド)は、荒涼とした気候のため、稲作はできないが、ジャガイモ栽培が非常に盛んだ。

故金正日総書記は、北朝鮮が大飢饉「苦難の行軍」の真っ只中にあった1990年代後半、スイスとドイツの栽培技術を導入し、この地の協同農場で実施させた。この「ジャガイモ革命」は成功を収め、道内の大紅湍(テホンダン)はジャガイモの名産地として知られるようになった。

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ところが、度重なる自然災害に襲われた今年は大不作になると見込まれている。

「昨年は15トンほどの収穫量をあげたジャガイモ農場で、今年は10トンしか収穫できなさとうだという話が出ている」(現地のデイリーNK内部情報筋)

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困ったのは学校の教師たちだ。全国的には崩壊して久しい国による食糧の配給システムだが、首都・平壌の市民、保衛部(秘密警察)や安全部(警察署)、軍需工場の労働者、そして教師に対する配給は続けられている。

(参考記事:北朝鮮の特別配給「平壌市民は豪華食品、地方はジャガイモ」

例年ならジャガイモの配給を受け取るころだが、配給を行う糧政事務所は、配給の割当量が書かれた供給指導書を発行するだけで、収穫、運送、配給は受け取る本人に丸投げしてしまったのだ。

その理由について、情報筋は言及していない。ただし、朝鮮労働党両江道委員会は問題を認識しつつも、ジャガイモの運送、保管には人力とコストを要するため、何もしていないのだと伝えている。

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配給量は、実際の収穫量ではなく、国が勝手に決めた生産計画量に基づいて決められているが、今年は計画より収穫が少ない。ボヤボヤしていると得られなくなるということで、教師たちは大慌てで農場に押しかけ、汗水垂らしてジャガイモを掘っているというわけだ。

内閣教育省は先月29日、何度も延期されていた学校の再開を今月15日に行うとの方針を全国の教育部、学校に示しているが、教師の中には、自分の割当量を確保するために、自分の生徒たちを動員してジャガイモを掘らせる者がいて、物議を醸している。

(参考記事:「全国の小中高の2割が台風で被害」北朝鮮で新学期が再び延期

ようやくジャガイモを確保したところで、大した収入にはならない。この地域では、ジャガイモはありふれたもので、市場に売りに出しても高値では売れない。高く売るには、清津(チョンジン)などの遠く離れた都会の市場まで売りに行く必要があるが、新型コロナウイルス対策として道の境界線を越える移動が制限されているため困難だ。密輸や海外送金ブローカー業に手を出す者もいるが、命を落としかねない。

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教師からは「国は配給をするならまともにやれ」という不満の声を上げている。情報筋は、北朝鮮の教育の現状を嘆き、次のように語った。

「口では教育は未来のための最も重要な事業と言いながら、国は教師の配給もまともに行えない。教員はコロナで授業を受けられずにいる子どもたちを動員して、ジャガイモを掘らせて自分のものにしている。こんな状況で教育になるのか」(情報筋)