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北朝鮮では他の社会主義国同様、様々な公共料金が極めて安く抑えられていた。電気料金もそのひとつだ。料金は1ヶ月に1円に満たない上にいくら使っても額が変わらない固定料金制だった。

水力発電により電気が豊富にあり、エアコン、洗濯機、電子レンジなど電気を大量に消費する家電が普及していなかったがために可能なものだった。また、家電の数を制限する方法で、電気使用量を抑制する対策も並行して取られた。

1990年代以降は設備の老朽化、燃料の不足などで電力供給が著しく滞るようになったが、電気料金に大きな変化はなかった。ところが、2017年になって大きな変化が生じた。固定料金制から、使った分だけ支払う従量制へと料金制度が変わった。同時に、極端に低かった電気料金を値上げする方針も示した。増収を狙ったものだったが、それにとどまらず当局は30ドル(約3180円)もする電気メーターの購入も強要し、強い反発が出ていた。

(参考記事:「電気代を払え」という当局の方針に猛反発する北朝鮮国民

それから3年。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNKの内部情報筋は、電気メーターの設置が順調に進んでいない状況を伝えた。

電気以外でもメーターというものが広く使われ、他の地域と比べて電力供給が円滑な平壌や地方の大都市では、電気メーターの設置が比較的順調に進んだが、他の地域では反発の声が上がった。

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道内のある都市では、地域の配電部の職員が人民班(町内会)の会議にやってきて、メーター設置について説明したところ、つるし上げのような状態になってしまった。ある住民は「国からの電気が1日に何時間来ると思ってるのか。それなら電線を切ってやる」などと凄む有様。住民の怒りには理由があった。

「自分のカネで買ったソーラーパネルで発電した電気に対してもカネを払えと言われて喜ぶ人がどこにいるのか」(情報筋)

金正恩党委員長は何度も電力問題の解決を訴えているが、先が見えない停電の長期化に閉口した北朝鮮の人々は、ソーラーパネルとバッテリーを購入、自宅に設置して太陽光で発電を行っている。初期投資はかなりの額になるが、照明やテレビなど必要最低限の電気を賄うのがやっとだ。そんな電気にも料金を払わせるというのだから、怒るのも当然だ。

(参考記事:北朝鮮が国民に「ソーラーパネル」を猛プッシュする理由

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人々の怒りの激しさに恐れをなしたのだろうか。地方当局は、自宅にある家電の数に応じて電気料金を払うことで折れた。お上の言うことに従順に従うイメージがある北朝鮮の人々だが、実際は抗議の声を上げて政策を撤回させる事例もあるのだ。

(参考記事:「どうやって食えというのか」北朝鮮で集団抗議活動、当局緊迫

さて、台数で料金が決まるとなれば、当然ごまかそうとする人が現れる。実際、家電の台数を確認しに来た人民班長にワイロを掴ませる人がいるようだが、当局はこれと言った対策をとっていない。また、多くの人が合理的と考え、正直に台数を申告しているようだ。費用がかかるメーターの設置が要らなくなり、情報筋は言及していないが、電気料金もさほど高くならないようだ。

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このような仕組みは、メーター設置が進んでいない様々な地域で導入されているが、公式のものではないようで、「元帥様(金正恩氏)の指示貫徹」を掲げて、いつまた不当な料金徴収が始まるかわからない状況だという。