北朝鮮は、新型コロナウイルス対策として、海外からの入国者や、少しでも感染が疑われる症状を見せた人を次から次へと隔離する措置を取った。
朝鮮人民軍(北朝鮮軍)内のデイリーNK内部情報筋は、軍医局は3月3日、1〜2月に180人が死亡し、3700人を隔離しているとの情報を最高司令部に報告したと伝えた。また、時事通信は4月1日、北朝鮮消息筋の話として、1万6000人以上が隔離されたと伝えた。
当局が徹底した隔離政策を取るのは、そもそも平時から「医療崩壊」状態にあるからだ。北朝鮮は、無料で誰もが医療を受けられると誇っているが、病院には医薬品がないため市場での購入を強いられ、医師の診察、治療を受けるにもワイロが求められる。こんな状態で新型コロナウイルスの感染が広がれば、国が存亡の危機に立たされてしまう。
(参考記事:金正恩式「コロナ対策」で死の淵に追いやられる患者たち)それだけあって、防疫ルールの違反者に対しては非常に厳しい処罰が下されるが、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、国境警備隊系の貿易機関の関係者多数が、規則に違反して隔離施設から無断で外出したことがバレて、厳罰が下されたと伝えた。
彼らは、出張で中国との国境に接する地域に行ってきた後で発熱したため、平壌郊外の平城(ピョンソン)にある国境警備隊司令部軍人宿泊所に隔離されていた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ところが、外出してはならないという規則に反し、家族や親戚と会ってレストランに食事に行っていたという。施設で出される食事は、大根の葉にトウモロコシとコメが少し入ったクッパばかりという貧弱なものだ。そんな食生活に耐えられなかったのだろう。
(参考記事:北朝鮮で新型コロナ収束に期待の声上がるも隔離費用徴収に不満)そんな彼らに下された処罰は、責罰除隊(不名誉除隊)と出党(朝鮮労働党からの追放)だった。死刑や投獄などの刑事罰を除けば、北朝鮮における最も厳しい処罰のひとつで、山奥の協同農場や鉱山に飛ばされてしまい、復帰できるかはわからない。それでも、殺されなかっただけマシかもしれない。
デイリーNKの平安北道(ピョンアンブクト)の軍の情報筋は今年2月、国家保衛省(秘密警察)が「企てられているすべての密輸、密売、輸出入行為を軍法で裁け」「これは最高司令官(金正恩氏)の命令だから、いい加減に扱ってはならない」という指示を、各国境警備隊に下したと伝えた。実際、規則を破って中国人と接触していた保衛指導員が銃殺されている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面(参考記事:北朝鮮、感染者を処刑か…金正恩式「新型コロナ対策」の冷酷無比)
通常時なら、カネやコネでもみ消したり、減刑させたりすることも可能だろうが、コロナ対策の規則の違反については、地方政府の幹部と言えども処罰を免れないというのが、住民の一般的な認識だという。
(参考記事:「量刑はワイロで決まる」北朝鮮の常識)