北朝鮮には現在、6本の高速道路があり、総延長は729キロに達する。しかし、首都・平壌を中心にした一部の地域をカバーするにとどまり、物流の大動脈である平壌―新義州(シニジュ)間をつなぐのも、高速道路ではなく一般の国道に過ぎない。
しかも、路面の状態はかなり悪い。至るところに穴が空いていて、「タコ」と呼ばれる土を固める道具を使っての補修作業が行われている。道に慣れたドライバーでなければスピードを出すのは難しいだろう。また、手を振ってソビ車(個人営業の輸送車両)を呼び止めようとする人もいて、危険極まりない。
(参考記事:軍事目的には使えない?穴ボコだらけの北朝鮮高速道路)事故も相次いでおり、2018年4月には、北朝鮮を訪れていた中国人観光客を乗せたバスが高速道路で事故を起こし、36人が死亡する大惨事となっている。
(参考記事:外国人も犠牲に…金正恩氏のベンツも怖い。北朝鮮「魔の道路」事情)
デイリーNKの内部情報筋は、全長196キロの平壌元山(ウォンサン)高速道路で事故が起き、スポーツ選手らが死傷したと伝えた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面事故が起きたのは先月27日の午後5時ごろのこと。平壌方面にに向かっていたトラックと、元山方面に向かっていたマイクロバスが衝突した。ちなみにこの高速道路には中央分離帯はない。
トラックは、元山葛麻(ウォンサン・カルマ)海岸観光地区の建設に必要な資材を受け取るために平壌方面に向かっていた。マイクロバスは山岳訓練に向かう4.25体育団の選手を乗せていた。
この事故で、選手1人が死亡し、4人が首や腰の骨を折る重傷を負った。負傷者は現場に近い平壌の病院に搬送され、治療を受けている。一方でトラックに乗っていたドライバー、助手、貨物管理担当者の3人は軽い打撲で済んだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面4.25体育団とは、平壌に本拠地を置く総合スポーツクラブで、特にサッカーは強豪として有名で、「朝鮮民主主義人民共和国1部流蹴球連盟戦」(DPRKプレミアフットボールリーグ)に参加している。なお、情報筋は亡くなった選手の名前には言及していない。
現場に出動した保安員(警察官)は、双方の車に乗っていた人から事情聴取を行い、前方不注意だったトラックの過失が大きいとの結論を下した。
情報筋は「江原道は山が高く険しいため、平壌元山高速道路は高速道路という名前が似合わないほど、急カーブが多い。事故が起きた時間帯は薄暗く、行き来する車両も少ないため、油断していて事故が起きたのだろう」と語った。