「秘密の話はiPhoneで」北朝鮮国内で広がる新常識

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「メッセージのやり取りはiPhone同士でやれば安全だ」
「敏感な話をするときはiPhoneを使おう」

最近、北朝鮮の人々の間でこんな認識が広まりつつあるという。

アップル社のスマートフォン、iPhone。そこに搭載されているiMessageというメッセンジャーアプリを使ってやり取りすれば、当局に監視されないとの認識が広まりつつあると、デイリーNKの情報筋が伝えてきた。

北朝鮮当局は、国外への情報流出や国内での韓流コンテンツなどの拡散防止に躍起になっており、国民に対する取り締まりを強めている。

(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…

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海外と裏ビジネスをする脱北ブローカーや送金ブローカーの間ではこれに対抗し、密かに国外と連絡する場合にカカオトークやLINEなどのメッセンジャーアプリを活用するケースも増えているという。

(参考記事:「LINEを使う人間はスパイ」金正恩体制が宣言)

冒頭で述べた「新常識」も、この延長線上で広まっているもようだ。

アップル社が公開した文書によると、iMessageでやり取りされる情報は暗号化されており、当事者以外は誰も見れないことになっている。ただ、ネット環境の悪いところでは正しく暗号化されない場合もあるとのことだ。

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韓国の大韓貿易投資振興公社(KOTRA)が2017年8月に発表した報告書では、北朝鮮当局が様々な形で携帯電話、スマートフォンへの監視を進めているとしている。

(参考記事:北朝鮮スマホ最新機種は「韓流拡散防止」装置付き

一部を除いて具体的な手法はわかっていないが、「監視されているのではないか」と疑心暗鬼に駆られた人たちが、iPhoneを買い求めているものと思われる。

(参考記事:「北朝鮮、普及進むスマホで国民の監視強化」韓国の貿易公社が報告書

アップル社と言えば、徹底的にユーザーのプライバシー保護を重視し、政府機関に対する頑ななまでの情報提供の拒否で知られている。

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例えば、米連邦捜査局(FBI)は、2015年にカリフォルニア州で起きた銃乱射事件の容疑者のiPhone5のロック解除への協力をアップル社に求めたが、拒否された。その後、裁判で協力命令が出されたが、アップル社は従わなかった。結局FBIは、第三者の協力を得てロック解除に成功したが、アップル社も対抗策を出した。

Appleはこれからもカスタマーのために、透明性とデータの機密保持の向上に取り組み続けます。

Appleはこれまで、自らのすべての製品とすべてのサービスにおいて、バックドア(情報の裏口)を設けたり、マスターキーを作成したことはありません。Appleのサーバへの直接のアクセスをいかなる政府に許可したこともなく、今後も決して許可しません。

(アップル社のウェブサイトより)

このようなアップル社の姿勢が、北朝鮮の人々の間でどれほど知られるようになったのかは定かでないが、「iPhoneなら安心」という認識だけは広がっているようだ。

金正恩党委員長はMacユーザーであると知られているが、だからと言って北朝鮮国民がそう簡単にアップル社の製品に触れられるわけではない。

(参考記事:金正恩氏はiMacユーザー…親子二代にわたってアップルファン?

平壌郊外の国営百貨店では、米国製のノートパソコンの販売が解禁されたとの情報があるが、続報がないことから、全国的に許可されたものではないと思われる。

(参考記事:北朝鮮の国営百貨店で米国製ノートPCの販売解禁

情報筋も「表立って使えず、密かに使っている方の携帯電話をiPhoneにしている」としていることから、米国製品は未だご禁制の品のようだ。それ以前に、iPhoneは北朝鮮製、中国製のスマートフォンと比べて高価なため、いくら新しい物好きで見栄っ張りな北朝鮮人といえども、簡単には手が出ないはずだ。

ちなみに、米国のマーケットシェア調査会社のスタットカウンターによると、北朝鮮で使われている携帯電話のOSのシェアは、アンドロイド78.89%、iOS21.11%だ。サンプル数は公開されていないが、乱高下を繰り返していることからさほど多くないものと思われる。

(参考記事:欧州から北朝鮮に強制送還された「ある女子高生」が辿る運命