北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は21日、戦時中の従軍慰安婦問題を巡り、「日本が働いた性奴隷犯罪は国際法的時効が適用されない」とする論評を掲載した。
北朝鮮メディアは最近、慰安婦問題への言及を強めている。国営の朝鮮中央通信は16日、「日本軍性奴隷問題の解決は国際的要求」と題した論評で次のように述べ、旧日本軍が朝鮮人慰安婦を虐殺した証拠とされる「映像記録編集物」があると主張した。
(参考記事:「日本軍が慰安婦を虐殺した映像ある」北朝鮮メディア報道)慰安婦問題を巡っては、韓国政府が元慰安婦らの支援事業を行ってきた財団の解散を正式に発表したことで、日韓関係の今後が不透明になっている。財団は、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」をうたった合意の柱だ。日本にとっては、まさにこの文言が重要なわけで、これが反故にされるのではないかということが最大の懸念だ。
韓国政府は「合意の破棄や再交渉は求めない」としているが、合意が徐々に骨抜きにされているのは否定できない事実だ。
そんな中での次のような北朝鮮の主張は、刺激的である。日韓がいかに「最終的な解決」をうたったところで自国とは関係なく、永遠に責任を追及すると言っているのだから。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「法律的時効に関する国際慣習法と成文法によると、戦争の犯罪や人道に関する犯罪、奴隷犯罪など基本人権に関する犯罪には、時効が適用されない」
また、上述の映像は2月27日、韓中日の専門家が出席して行われた旧日本軍の慰安婦問題に関する国際カンファレンスで、韓国・ソウル市とソウル大人権センターが公開したものを指している。これに言及するのは、北朝鮮が今後、日本と歴史問題を巡って交渉するにあたり、資料収集などで海外の団体との連携を強める姿勢を示唆したものと言えるかもしれない。
仮に、韓国政府が本当に日韓合意の破棄や再交渉に進まず、何らかの形で「不可逆的かつ最終的な解決」を目指すならば、韓国の運動団体にはストレスがたまる。北朝鮮は日本を圧迫しながら、韓国世論の歓心を買うという「一石二鳥」を狙っているのかもしれない。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。