韓国のリバティ・コリア・ポスト(LKP)は17日、これまで銃殺されたと思われていた北朝鮮きってのイケメン俳優、チェ・ウンチョル氏が実は生きていて、最近になって政治犯収容所から釈放されたと伝えた。
チェ・ウンチョル氏は1980〜90年代にかけて、北朝鮮の映画界で活躍した。脱北者で平壌中枢の人事情報に精通する李潤傑(イ・ユンゴル)北朝鮮戦略情報センター代表によると、「北朝鮮的な美男子」であったチェ・ウンチョル氏は、演技力以外にも多才なところを見せつけ、女性たちから爆発的な人気を集めた。
(参考記事:【写真】北朝鮮の「イケメン俳優」チェ・ウンチョル)そのまま銀幕のスターであり続けていれば、彼は俳優として幸せな人生を送れたかもしれない。しかし、金正恩氏の叔父である張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長の縁戚となったことで、彼の運命は大きく変わってしまった。
一時は北朝鮮で「実力ナンバーワン」と言われた張氏の威光を背景に、様々な利権事業に介入して巨額のカネを手にしたのだ。そこまでは良かったものの、2013年12月に張氏が処刑されると、「張成沢一派」と見なされともに葬られてしまったとされていた。しかし、実際には処刑されたのではなく、政治犯収容所に送られていたもようだ。
そのようにして消された芸能人は、彼ひとりではない。一時は北朝鮮の銀幕スターだった女優キム・ヘギョンも、同様の運命を辿った。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面キム・ヘギョンの生い立ちは詳らかでないが前出の李代表によると、彼女の元々の所属先は朝鮮労働党中央の組織指導部5課、つまりは「喜び組」だったという。
(参考記事:【写真】女優 キム・ヘギョン――その非業の生涯)金正恩氏は、母親の高ヨンヒ氏が舞踊家出身で、妻の李雪主(リ・ソルチュ)氏は元歌手だ。芸能関係者とは縁の深い身でありながら、だからといって特段の情けをかけるわけではないようだ。
北朝鮮で政治犯収容所に送られるということは、処刑と近い意味を持つ。収容所の環境は、人間がとうてい生き延びられるものではないからだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面それでもチェ・ウンチョル氏が地獄の淵から這い上がってこれたのは、張成沢氏の秘匿資金のありかを知っているからだとLKPは伝えている。過酷な経済制裁の中、外貨をかき集めなければならない北朝鮮の台所事情が、彼を救った可能性があるというわけだ。
(参考記事:北朝鮮、拘禁施設の過酷な実態…「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も)高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。