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3月2日は北朝鮮の植樹節、つまり「みどりの日」だ。当局は住民を総動員して山に木を植えさせる事業を展開するが、植えても植えても山に緑が戻る気配はない。そのワケを米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋がRFAに語ったところによると、朝鮮労働党中央委員会は3月2日の植樹節を控え、「山林造成事業で一大革命を起こすことについて」という指示を下した。春の植樹に住民を総動員せよとの指示は道、市、郡の党組織から、各機関、企業所、人民班(町内会)に至るまで伝達された。各機関には植える木の本数が割り当てられ、ちゃんと育つよう1年間管理することも義務付けられた。

これに合わせて、朝鮮労働党機関紙・労働新聞は大キャンペーンを繰り広げている。2日には「春の植樹に皆が立ち上がり愛国の汗と熱情を余すところなく捧げよう」という長文の社説を1面に掲載した。

しかし、住民はキャンペーンに呼応するどころか、反発している。カネと時間と体力を無駄にするばかりで、何の効果もないからだ。

清津(チョンジン)市当局は、苗木と道具の購入費として1世帯あたり3000北朝鮮ウォン(約42円)を徴収した。コメの値段で換算すると6〜700グラムほどにしかならず、決して大金ではないのだが、物価の高騰で苦しい生活を強いられている人々は、そんなカネですら出す余裕などないのだろう。

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カネを出したら、次は山に行って木を植えなければならない。商売や個人的な事情で参加できない人は、1日1万北朝鮮ウォン(約140円)の「労力動員費」を支払うことを強いられる。トンジュ(金主、新興富裕層)は多額のカネを払ってこれらすべてを免除されている。

別の情報筋によると、昨年、国土環境保護局と山林経営委員会は多額の予算を投入して中国から苗木を輸入し、植樹したが、冷たい海風のせいでほとんどが枯れてしまった。そのため、今年は海風と寒さに強いというカラマツを植えることにした。各機関が一度に苗木を購入しようとしたため、苗木1セット(200本)の値段が5万北朝鮮ウォン(約700円)まで高騰してしまった。これでは住民の負担が増えかねない。

北朝鮮では毎年、このような植林を行っているが、木が増える気配がない。人々の間からは、「山林造成を名目にして総動員令をかけたのは、植林が目的ではなく、住民の懐のカネが目的ではなかったのか」「毎年カネを払って木を植えたのにあれはどこに行ったのか」などと不満が噴出している。

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それにしても、なぜ植林がうまくいかないのだろうか。

北朝鮮の山々は、第二次世界大戦末期から朝鮮戦争にかけて、燃料となる薪を切り出したり、食料を得るために畑を作ったりして、ハゲ山になってしまった。金日成主席は、4月6日を植樹節に定め植林事業を進めたが、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のせいでまたハゲ山に戻ってしまった。人々が食料を得るために山を切り開き、畑を作ったからだ。

そんな現状を見た金正恩党委員長は2012年4月27日、党と内閣の幹部を前に「国土管理事業において革命的転換を引き起こそう」という演説を行い、10年以内に山林を元に戻すと宣言した。しかし、住民から畑を奪ってその土地に木を植えるという強引なやり方が反発を呼んだ。人々は、植えたそばから木を抜くなどして、抵抗した。

(参考記事:数十年にわたり木を植え続けてもハゲ山のまま…北朝鮮の植樹事業のナゾ

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そもそも、北朝鮮ではあらゆる分野において「虚偽報告」という悪弊が蔓延している。上から押し付けられたノルマを達成できなければ、現場の担当者は処罰されてしまうため、適当に嘘の数字を報告するのだ。それは植林事業とて例外ではない。そんな数字が回り回って最終的には現実とかけ離れたものとなってしまう。

間違った数字は「人災」という取り返しのつかない結果を生む。決して笑い事では済まされないのだ。