特定の国および民族集団、あるいは在日外国人など少数者へのバッシングを目的とした出版物(ヘイト本)、そしてネット上でのヘイト表現はなぜ、これほどまでに広まってしまったのか。野間易通氏と李策氏を迎え、出版業界の内幕から旧来リベラリズムの弱点、これから進むべき方向性までを話し合った。鼎談連載の後半。(デイリーNKジャパン編集長 高英起)
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崇高かつ下品なコンテンツで勝負する
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面李策(以下、李) およそ10年前に『マンガ嫌韓流』が出て、その便乗本が出版され始めたころには、野間さんたちのように書店や図書館にまで文句を言おうという人たちはいませんでした。当時と今とで何が違うのでしょうか。
野間易通(以下、野間) いわゆるリベラルな人たちというのは、自分が「抑圧的だ」と見られることを避けたがりますからね。この表現は良くないな、と思っても「やめろ」と声を上げたり行動したりしない。その一方、ネトウヨはそんなこと気にせえへんから、『はだしのゲン』は反日マンガだから図書館から撤去しろと言ったり(韓国人女優をCMに起用した)ロート製薬を脅してみたり、何でもするでしょ。
高英起(以下、高) 自分と違う主張をつぶす上では本当に遠慮がないですからね。ネット空間の匿名性が、その傾向を爆発的に加速させた。
野間 インターネットが普及し始めた1995年から90年代いっぱいぐらいにかけて、ネットの中で「タブーをつくらない」ことにこだわってきたのは、実はリベラルの側やったんです。既得権を持つマスコミは色んなことを隠しているけれども、「ネット言論はそうじゃない、何事も隠さず議論すれば集合知によって正しい結論に近付くんだ」という信念みたいなものがあって、それがしだいにドグマ(教義)化してきた。その中で、権力に対抗する手段として匿名性が重視されてきたわけです。
李 ウィキリークスなんかはそういうものになっていますよね。ところが日本では……。
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