北朝鮮が韓国に屈し、事実上の謝罪を行ったのだ。一敗地に塗れた金正恩党委員長は、韓国に対する軍事力での雪辱を誓ったのだろう。同年末までは韓国との友好協力に応じるふりをして時間を稼ぎ、2016年に入るや否や核実験を強行。そして、現在の情勢に至っているのだ。
つまり2015年の危機において、北朝鮮は「現状では韓国に勝てない」と考え、チキンレースから降りたのだ。しかし、当時と比べようもなく核戦力を強化した現在ならどうか。
1人の兵士脱北が、第2次朝鮮戦争のきっかけになることも、あり得ないことではないのだ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。