また、厳密には反体制の動きとは言えないが、1995年には当局の横暴に抗議した労働者たちが、ことごとく戦車に轢き殺される虐殺事件も起きている。
ただ、テ氏の語った金日成総合大学の事件については、詳細が伝えられたことはないと思われる。同大学は、北朝鮮のエリートの子どもたちが通う大学であり、誰が反体制に関わり、その後、エリート層でどのような人間関係や意識の変化があったかを知ることは、北朝鮮の現在を知る上でも非常に重要なのだ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。