2012年には、清津(チョンジン)で保衛部幹部、道検察所幹部、道人民保安局幹部の4人が殺害される事件が発生した。遺体の横には「人民の名で処断する」というメモが残されていたという。
(関連記事:妻子まで惨殺の悲劇も…北朝鮮で警察官への「報復」相次ぐ)横暴な治安機関員に対する庶民の不満の高まりを受けて、金正恩党委員長は昨年、人民保安省(警察庁)に対して「捜索令状なしに家宅捜索をするな」という指示を出したと伝えられている。殺人は決して許されるべきことではないが、庶民の復讐が金正恩氏にこのような指示を出させたとするなら、それはすなわち怒れる大衆のささやかな勝利と言うことができるだろう。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。