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突然の電話にイさんは当惑したが、落ち着いてから「これはワナだ」と感づいた。中国へ行かなかったのはもちろん、折り返しの電話もしなかった。後にわかったことだが、ブローカーの女性は、保衛省に脅されてイさんに電話をかけていたのだ。

取り調べで恐喝と拷問を駆使する保衛省らしいやり口だ。恐喝もさることながら保衛省の拷問のすさまじさを物語る悲惨なエピソードがある。一昨年5月、韓流ビデオのファイルを保有していた容疑だけで女子大生が摘発された。保衛省は彼女に過酷な拷問を加えた。拷問の辛さとその先の人生に絶望した女子大生は、悲劇的な選択をするまでに追い込まれた。

(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…

幸いにも、イさんには保衛省の悪巧みは成功しなかったが、エサとして泳がされていた2人の脱北者は用済みとなって強制送還されてしまった。