当局は5月から、任期を終えて帰国した労働者を平壌旅行に連れて行くことにした。ところが、その費用は口座から無断で引き落とされる。労働者から少しでも多くのカネを巻き上げるための、慰安旅行を口実にした「ピンハネ」である。
労働者たちはこうして、知らぬ間にすってんてんになされてしまう。何年も苦労したのに、手元に残るカネがほとんどないとなれば、怒らない人はいないだろう。
かくして、海外で働こうとする人は減る一方だが、北朝鮮労働者に対する海外も徐々に減っていくかもしれない。中国当局が先月、一部の国内企業に対し北朝鮮労働者の雇用を停止するよう指示したからだ。対象は徐々に拡大しつつあり、中国から北朝鮮労働者が完全に締め出される日もそう遠くないだろう。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。