実際、2016年1月には北朝鮮の女子高生ら15人が「米国映画を見た」との容疑で、「見せしめ」のため公開裁判にかけられる出来事があった。ハリウッド映画は、すでに北朝鮮でも見られているのだ。
人間の感性にうったえる優れたエンタテインメントは、体制の違いを超えて多くの人々に訴えかける力がある。今のところ、これの他に、金正恩体制の弱点を突く有力な武器は見つかっていない。日本の場合、世界的に人気のマンガやアニメが武器になり得るということだ。
もっとも、ハリウッドを動かすには相当なカネがかかるだろうが、だからこそ、米国政府が本気になってくれることを期待したいものだ。
(参考記事:亡命した北朝鮮外交官、「ドラゴンボール」ファンの次男を待っていた「地獄」)高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。