「仕事は複雑で大変です。でも、働けば働いた分だけ給料をもらえる。北朝鮮にいた時は、なにかと理由をつけて天引きされて、残る給料はわずか。給料だけでなく残業代をもらえた時は新鮮な感じがしましたし、本当に感動しました」
脱北して中国に潜伏し、その後、韓国や第三国へ向かう過程で多くの女性らが悲惨な体験をしているが、彼女たちは懸命に生き延びている。その一方で、北朝鮮男性の多くは国内でもまともな給料がもらえない企業所(会社)に出勤する義務に縛られており、商売すらする余裕がない。そうして生活がひっ迫し、妻から三行半をつきつけられるケースも多い。
女性らの脱北の増加は、こうした家庭レベルでの現象を通り越して、もはや国家体制、すなわち金正恩体制が女性から三行半をつきつけられていることを物語っている。
(参考記事:金正恩氏をとことん追い詰めようとする女性たち)高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。