北朝鮮当局も保安員(警察官)を動員してコチェビを追い出していたが、捕まえてもどう処遇すればいいかわからず、結局は取り締まるフリをしていたという。完工間近の黎明通りも、他のタワーマンションと同じようにコチェビたちのねぐらになるだろうと、このビジネスマンは見ている。
ちなみに、韓国で最も高いタワーマンションは釜山にある80階建てのウィーブ・ゼニス・タワーA(300メートル)だ。まさか、金正恩氏は韓国のタワーマンションを超えようとしているわけではないと思うが、それにしてもマンション建設に対する執着ぶりは異常だ。
北朝鮮の経済は相対的に良くなっているが、力を入れるべきは無用の長物のタワーマンション建設ではなく、国民の生活を下支えをするインフラ整備だ。しかし、金正恩氏のハコモノ事業は当分止まりそうにない。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。