北朝鮮女性の「性的被害」と「人身売買」…中朝国境で何が起きているのか

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国連人権理事会は24日、北朝鮮の人権問題の責任を追及するため監視体制を強化するとした決議案を採択した。

決議は、北朝鮮の人権侵害について、国際刑事裁判所(ICC)での責任追及を求めるよう勧告した国連特別報告者の報告を「歓迎する」と明記。また、北朝鮮人権事務所(韓国・ソウル)をはじめとする国連人権高等弁務官事務所による監視体制を強化することや、責任者の訴追などを視野に国際刑事法など複数の法律専門家の任命を求めた。決議はもちろん、日本人拉致問題の早期解決にも言及している。

ブローカーに監禁され

一方、欧州連合(EU)とともに決議案を共同提出した日本は当初、47カ国の理事国による全会一致での採択を目指していたが、一部の理事国によりそれがかなわず、投票なしでの採択になったという。報道によると、反対したのは中国、キューバ、ベネズエラなどだ。

一部の国は、北朝鮮の人権侵害がいかに残酷なものであるかを知らされても、北朝鮮との友好関係を優先して、あるいは人権問題の矛先が自国へ向くのを警戒して、責任追及に同調しようとしない。中国などは、おそらくその両方だろう。

しかしハッキリ言って、中国の協力なしに、早期に北朝鮮の人権状況を改善するのは難しいと言える。北朝鮮と陸続きの中国には大勢の脱北者が逃げ込んでおり、いまも万単位の人が、韓国などへ逃れることができず潜伏している。中国当局は北朝鮮に協力し、そうした人々を摘発しては強制送還しているのだ。

(参考記事:刑務所の幹部に強姦され、中絶手術を受けさせられた北朝鮮女性の証言

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そのような状況下、脱北女性がブローカーに監禁され性的搾取を受けたり、人身売買の被害に遭ったりしている実情については何度も述べてきた。

北朝鮮が核実験を強行するたび、国際社会は対北制裁における中国の「本気度」に疑いの目を向けてきたが、このような状況を問題視しないのはナンセンスである。

何故なら、北朝鮮の核・ミサイルの暴走を止めるには金正恩体制の変更を考えねばならず、それは北朝鮮の民主化を考えるのと同義だからだ。中朝国境地帯で北朝鮮の人々の人権が守られないならば、北朝鮮内部に変化を望むことはほとんど不可能なのである。

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最近、韓国やアメリカでは、脱北女性が結成したNGOなどが、北朝鮮女性に対する人権侵害について告発の動きを強めている。その中では、中国における人身売買や性的被害についての証言も聞くことができる。

そのような声に耳を傾け、中朝国境地帯でいま何が起きているかを知ることは、アジアの安全保障を考えるうえでも重要なことなのだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記