金正男氏殺害で気になる正恩氏「美貌の姉」の身の上

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

マレーシア警察が13日に殺害された金正恩党委員長の異母兄・金正男(キム・ジョンナム)氏の遺体から猛毒VXを検出したことで、事件が緻密に計画された組織的犯行である可能性がいよいよ高まって来た。

「監禁」説も

しかし、犯行が北朝鮮当局によるものなのか、そして指示を下したのが正恩氏だったのか、といったことは、そう簡単に解明されないだろう。ちょうど20年前に行われたもう一つの「身内殺し」も、韓国で摘発された北朝鮮「夫婦スパイ」の証言がなければ、犯人が特定されたかどうかもわからない。

それでも、ひとつ重要なファクトが浮かんだことは確かだ。それは北朝鮮の国父・故金日成主席の血筋――「白頭血統」までもが殺害の対象となるということだ。

ちなみに「白頭血統」との呼び名は、金日成氏が朝鮮半島の最高峰・白頭山を根拠地に抗日パルチザン闘争を戦ったという北朝鮮の「正史」に由来している。

そして、この血統を引く故金正日総書記の子供の世代はハッキリわかっているだけで、長男の正男氏を含めれば3男4女があった。もっとも、金正日氏の女性遍歴はなかなかのもので、「他にもいる」との説も根強くある。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

近年では、権力との絡みで名前が挙がるのは、これらの子供のうち4人だけになっていた。正男氏と正恩氏、それから正恩氏と同じ高ヨンヒ氏を母に持つ妹の与正(ヨジョン)氏。そしてもうひとりが、金正日氏が唯一正式に結婚した金英淑(キム・ヨンスク)氏が生んだ娘・雪松(ソルソン)氏である。

1974年生まれとされる雪松氏は、正男氏の妹であり、正恩氏にとっては姉だ。脱北者らの証言によれば、身長165センチほどで目鼻立ちのハッキリした美人タイプ。父親の視察にも同行し、その際は朝鮮人民軍の制服に中佐の階級章を付けていた。

雪松氏は父親からたいそう可愛がられたという。実務やコミュニケーション能力にも長け、秘書的な役割を担っていたとされている。北朝鮮の独裁者は孤独であり、猜疑心も強い。身の安全のためにも、全幅の信頼を置ける家族に身の回りのことを仕切らせているとされる。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

ちなみに正恩氏は、一般人と同じトイレを使えないなど独特の事情もあってか、妹の与正氏に秘書役をさせているとも言われる。

(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

雪松氏は黒子に徹していたためか、海外にもよく知られた存在がある割に、ハッキリ本人とわかる写真がない。1枚、金正日氏と並んで写ったふくよかな女性の写真が「雪松氏だ」と言われているが、「いや、違う」との意見もあり定かではない。

雪松氏は北朝鮮が正恩政権になって以降、徐々に動静が伝わらなくなっていたが、正男氏殺害事件を受けて韓国の一部メディアが言及している。「監禁された」とする報道もあるものの、確たる情報ではないようだ。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

しかし、雪松氏は正恩氏よりもより長く仕事の現場で父親に仕え、教えを受けていたものと思われる。そのような存在を正恩氏がどう思っているのか、非常に気になるところではある。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記