また、北朝鮮には韓国や中国のラジオを密かに聞いて、情報を得ている人が相当数おり、韓国のテレビを見ている人すら存在する。軍事境界線から近いエリアはもちろんのこと、首都・平壌を越え、ソウルから300キロも離れた平安北道博川(パクチョン)や雲山(ウンサン)でも、韓国のテレビが受信できる。
北朝鮮当局が、正男氏殺害の事実が国内で拡散するのを防ぐ手段はないと言っていいだろう。果たしてこの情報は、北朝鮮国民の胸中にどんな思いを生じさせるのだろうか。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。