金正恩氏の「機密漏洩は厳罰に処す」という内部文書が流出

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北朝鮮の内部資料が海外に流出する事態は、もはや日常茶飯事となった。

先日は、北朝鮮の高速道路で頻発する強盗事件の詳細と、それに対する金正恩党委員長の厳罰で対処せよという指示が書かれた内部文書が、韓国の北朝鮮向けラジオ局・自由北韓放送によって公開された。

その深刻さを表すかのように、金正恩党委員長が「機密を漏洩させた者は厳罰に処す」とした内部文書まで漏洩してしまったのだ。自分のトイレ事情まで流出してしまっている正恩氏だけに、ここまで漏洩が続くと、さすがに怒り心頭なのではないだろうか。

(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

「オレも売って儲けたい!」

韓国の聯合ニュースは、「敬愛する金正恩同志の2016年8月17日の指示、◯◯◯郡◯◯◯事業所の初級党で党内の秘密を漏洩させた資料と対策報告」という朝鮮労働党総務部が作成した文書を入手、公開した。「絶対秘密」とされたこの文書には、金正恩氏が地方組織に下した指示が記されている。

金正恩氏は、党の内部文書の保管を怠り、機密を漏洩させた党のイルクンを厳罰に処して、再発防止のための対策を立てよとの指示を下している。文書には、具体的な機密漏洩の実例が記されている。

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「◯◯◯事業所の初級党副委員長は、昨年10月から今年4月にかけて、初級党委員長しか入れない機密文書保管室に入り、13回にわたって党の文献6部と、党内雑誌『党事業』7部を抜き取り、この事業所の47歳の男性労働者に1万5000北朝鮮ウォン(約225円)の現金と家庭用変圧器と引き換えに売り渡していた」

これに対して、党組織においてこのような現象が起こらないよう、強力な対策を立てよと金正恩氏が指示したと記されている。金正恩氏は、先日開催された第1回全党初級党委員長大会の開会の辞で、不正腐敗が党の下部組織にまで蔓延していると厳しく指摘している。

また、報告を行った金己男(キム・ギナム)党中央委員会副委員長も「不正腐敗行為は必ず克服すべき深刻な欠陥」とし「党と首領の権威を毀損したり、歯向かったりする小さな要素も無慈悲に叩き潰さなければならない」と批判している。

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繰り返される警告にも、情報漏洩は止まりそうにない。

今年8月、保衛省(秘密警察)が「内部資料を韓国や中国に売り渡してカネを稼いでいる者がいる」と警告を発した。ところが、「内部資料を売り渡した見返りに5000元(約8万4000円)を受け取っている」と具体的な額を公開してしまったため、住民の間からは「そんなに儲かるんだったらぜひとも売り渡して一儲けしたい」との反応が続出するという、笑うに笑えない状況となった。

法や規則に従って真面目に生きようとすれば、餓死しかねない北朝鮮。正直者が馬鹿を見る今の体制が変わらない限りは、情報漏洩の根絶は夢のまた夢だろう。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記