金正恩氏が「ブチ切れて拳銃乱射」…独裁者「ご乱心」の1年

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東京新聞が13日付朝刊で、北朝鮮の金正恩党委員長の「ご乱心ぶり」を垣間見せる興味深いエピソードを紹介している。一部を引用しよう。

今年9月末の夜。北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は、全国に三十以上ある別荘の一つに急きょ軍長老を集めた。「おまえたちが軍事衛星ひとつ造れなかったのは反逆罪に等しい過ちだ」。泥酔していた正恩氏は怒鳴り散らし、夜を徹して反省文を書くよう命じた。

震え上がった長老たちは翌朝、書き上げた反省文を携えて控えていた。それを見つけた正恩氏は、事情をのみ込めない様子で言い放つ。「どうして集まっているんだ? 皆いい年なんだから、もっと健康に気を使え」。これを聞いた長老たちはその場で号泣。一方の正恩氏は自分の温情に感動したとでも思ったのか、満足げな表情だったという。

長老たちが号泣した本当の理由は、説明するまでもないだろう。「処刑されるかもしれない」との恐怖から解放され、一気に緊張感が緩んだのだ。

処刑動画を公開

正恩氏が、ちょっとしたことで側近を処刑する、残忍な独裁者であることは周知のとおりだ。今年はそれに加え、彼の「暴走ぶり」に関するエピソードがいくつも伝えられた。

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韓国の聯合ニュースは8月、正恩氏の「ご乱心」ぶりについて、あるうわさを伝えている。なぜか日本語版ウェブサイトでは削除されているのだが、記事のハングル版原文には次のような一説がある。

「米国が自分を人権犯罪者扱いしていると言って激怒し、拳銃に実弾を装填して辺りに乱射した」

あくまでうわさだが、事実ならば正気の沙汰ではない。もっとも、正恩氏は昨年、スッポン養殖工場を視察して支配人の職務怠慢にブチ切れ、彼を処刑にした際、その直前の動画をテレビで放映させていた。

(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導

女学生の涙

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自分の怒りの強さを、周囲に思い知らせなければ気が済まない性質なのかもしれない。

韓国の情報機関、国家情報院(国情院)は10月19日、国会情報委員会の国政監査で、北朝鮮の金正恩党委員長が毎週3、4回ずつ夜通しのパーティー(酒宴)を開き、不摂生な生活と食習慣のために健康不安を抱えているとの分析を報告した。

正恩氏がパーティーを開いていること自体は知られていた。元NBAのスター、デニス・ロッドマンが訪朝した際には、名門学院から女学生たちをコンパニオンとして動員。彼女たちが陰で泣いていたとの話がある。

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それにしても、いかに「やりたい放題」の独裁者とはいえ、週3、4回のパーティーとは異常である。

このような暴走が続けば、正恩氏はいずれ国内でも孤立し、幹部らの面従腹背もひどくなるだろう。

もしかしたら国際社会による制裁よりも先に、こうしたことが原因で起きる体制の機能不全によって、北朝鮮で異変が起きる可能性もないとは言えない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記