金正恩氏が「処刑会議」を開催か…革命の聖地で隠密行脚

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北朝鮮の国営メディアによれば、金正恩党委員長は先月末、軍部隊など、北部の両江道(リャンガンド)の各地を訪問した。

ところがこの訪問は、視察よりも、指導部のメンバーと特閣(別荘)で会議を行うことに重点を置いたものであったとの情報が飛び込んできた。

人間を「ミンチ」に

金正恩氏は先月24日の午前11時ごろ、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)第380大連合部隊の指揮部を訪れたと、朝鮮中央通信が先月25日に報じた。これには、黄炳瑞(ファン・ビョンソ)氏、崔龍海(チェ・リョンヘ)氏、李永吉(リ・ヨンギル)氏が同行した。

同通信はまた、金正恩氏が三池淵郡の各地を視察したと28日の記事で報じている。

しかし、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、金正恩氏は視察をそそくさと済ませ、同行した幹部とともに、道内某所にある特閣に移動し、27日まで滞在していたとのことだ。

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そこで何が話し合われたのかは明らかになってない。しかし両江道は、金日成氏の革命活動の舞台で、金正日氏の生誕の地とされている、「革命の聖地」だけあって、 人事問題や対韓国戦略などの重量な政策について論議された可能性がある。

情報筋は次のように説明した。

「同じ会議でも、平壌ではなく両江道でやったほうが、『白頭山精神』と結びつけて語りやすいというメリットがある。韓国情勢の混乱を受けて『統一偉業を成し遂げる機会』と宣伝していることを考えると、指導部に対韓国革命力量の強化と総攻勢を指示した可能性もある」

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「一方で、張成沢氏の処刑前に、金正恩氏が指導部を集めて会議を行なったことを考えると、今回も処刑や粛清などの人事問題について論議したのかもしれない」

今回の会議について、韓国の西江大学の金英秀教授は次のように述べている。

「会議は、金正恩体制を補佐する側近たちの団結を図る性格のものと思われる。訪問に同行した側近以外にも、別途呼び寄せた人物がいるかもしれない。この場では、粛清すべき人物について率直な報告を受ける場であった可能性も排除できない。権力をめぐる争いで金正恩氏の何らかの指示があった可能性もある」

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正恩氏が、幹部の粛清や公開処刑で国民の恐怖心をコントロールし、独裁体制の維持につなげているのは周知のとおりだ。昨年には、側近である玄永哲元人民武力相を、大口径の高射砲で文字通り「ミンチ」にして処刑。前年10月に行われた公開処刑については、その場面が衛星画像で確認されている。

ただ、このような行為が、どのようなプロセスを経て実行されるのかはほとんど情報が共有されていない。公開処刑が民衆を操る手段である以上、北朝鮮の人権侵害の本質を見極めるには、そのプロセスや仕組みについて知るのは必要不可欠な取り組みと言える。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記