「あきれた理由」で女性を拷問する金正恩氏の秘密警察

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北朝鮮で、20代の脱北者家族の女性が国家安全保衛部(秘密警察)に逮捕され、ひどい拷問を受けたことが明らかになった。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、茂山(ムサン)郡で農業を営む20代の女性が、保衛部に逮捕された。その理由は「農民がこんなにカネを持っているわけがない」という、おおよそまともな容疑とはいえないものだ。

女性は取調室で「カネの出処を言え」と執拗に迫られ、ひどい拷問を受けた。女性は1ヶ月後に釈放されたが、拷問のせいで体を動かすことすらままならない状態に陥っている。保衛部はそればかりか、この女性の自宅からトウモロコシ5トンを奪い、内部で山分けしたという。

今年4月には、この女性の叔母も同じ理由で逮捕され、10日後に拷問で殺されてしまったという。

これについて保衛部は「病死した」と弁明している。こんな人権侵害に遭っても、遺族はどこにも訴え出ることはできない。庶民らは「裏でありとあらゆる悪事を働いているくせして、力のない庶民にひどいことをする」と保衛部を非難している。

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それにしても、保衛部はなぜこの一家をここまで追い込むのだろうか。実は、家族の一員が脱北して韓国で暮らしており、一家は仕送りを受け取っているが、保衛部はそれをスパイ用の資金だと見ているようだと情報筋は説明した。

この一家は、保衛部からの金品の要求に応じなかったか、要求を満たせなかったことで報復されたとの見方もできる。情報筋は詳細を明らかにしていないものの、次のような言葉から、状況を推察できる。

「保衛部員は『家族の中に南朝鮮(韓国)に行ったやつがいる者は、反省して余計なことをするな』と脅迫している」(情報筋)

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また、脱北者家族は、先に韓国入りした者の手引で脱北する可能性が非常に高い。それを暴力で封じ込め、金づるを維持しようとしているとも取れる。

しかし、こんな理不尽な国で、ずっと暮らそうとは思わないだろう。結局、当局が脱北を煽っていることになる。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記