北朝鮮で「サウナ不倫」が流行、格差社会が浮き彫りに

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北朝鮮に冬がやって来た。まだ11月だが、比較的温かい平地でも朝の気温は0度前後、北部山間地域では氷点下はるかに下回る。

人々は、寒さに加え、大増産運動「200日戦闘」の度重なる動員で、クタクタになった体を癒やすため、サウナを楽しむ。国の機関が運営するサウナもあるが、人気があるのはトンジュ(金主、新興富裕層)が経営する民間のサウナだ。

「夫婦湯」の実態

両江道(リャンガンド)恵山(へサン)市では、恵江洞(ヘガンドン)、恵山洞(ヘサンドン)、城後洞(ソンフドン)などに民間のサウナがある。北朝鮮では汗蒸湯(ハンジュンタン)と呼ばれている。

サウナには幹部、トンジュはもちろん、一般の人々も多く訪れている。料金は1人6000北朝鮮ウォン(約72円)。農村ではその半分だ。コメ0.5キロから1キロ分ほどの料金なので、財布にも優しい。

このようなサウナには「夫婦湯」と呼ばれるVIPルームがある。利用料は1時間6万北朝鮮ウォン(約720円)で一般の10倍。庶民にはとても手が出ない。

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本来、夫婦湯は夫婦であることを示す公民証(身分証明書)を提示しなければ入れないが、幹部やトンジュはカネに物を言わせて堂々と入っているのだ。そのため、庶民の怨嗟の的となっている。

中には、サウナのオーナーのところに押しかけて「夫婦湯は不倫の温床だ。さらに料金も高い。あんなものは廃止してしまえ」とクレームを付ける人もいる。オーナーで「きちんと手続きを踏んで営業しているのに、客にあれこれ指図までしろというのか」と反論する。

(参考記事:ラブホテル化する北朝鮮のスーパー銭湯

「カネさえあれば…」やりたい放題

地方の民間サウナより段違いに豪華なのは、平壌市内にある国営のスーパー銭湯だ。2012年11月に完成した「柳京院」には、竹、塩、鍾乳石など様々なサウナ、レストラン、美容院がある。鍾乳石は血の巡りをよくして、腎臓や肝臓の機能を高めると言われており、北朝鮮では人気が高い。

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入場料はなんと15ドル(約1580円)。北朝鮮ウォンに直すと12万ウォンを超え、民間のサウナの20倍の高さだ。トンジュの「外貨タンス預金」を国庫に吸収するために作られた豪華施設だけあって、料金が非常に高く設定されているのだ。

一方、1980年に完成した国営スーパー銭湯の「蒼光院」の入場料は5ドル(約530円)。柳京院よりは安く、平日には一般庶民も利用できるが、切符を買うために長ければ半日も並ばなければならない。また、列に横入りしようとする兵士や突撃隊(建設労働者)との間で喧嘩になることも多い。そういう面倒を避けて楽に入りたい人は、職員にワイロを掴ませる。

もちろん、蒼光院にも「夫婦湯」があり、夫婦でなくともワイロを払えば使えるため、手頃な不倫場所となっている。

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かつて、北朝鮮でやりたい放題なのは、党幹部など政治権力を握った人々であると相場が決まっていた。

しかし今や、国民経済の市場経済化を受けて、「カネさえあれば……」という世相に変わってきているのである。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記