金正恩エリートら、出世をエサに性暴行…権力層の横暴に庶民も激怒

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北朝鮮権力層の不正と横暴に庶民からの怒りが高まっている。北朝鮮の正式名称は朝鮮民主主義人民共和国だ。国家の建前は格差は存在せず、皆が平等に暮らせるとしているが、実際は上から下まで徹底した階級社会だ。さらに一部の権力層はやりたい放題だ。

最も有名なところでは、金正恩党委員長の側近中の側近で、いわば「金正恩エリート」の代表格とも言える崔龍海(チェ・リョンヘ)氏。崔氏をよく知る人物によると、北朝鮮一のブランド好きで派手な生活を好むという。過去には、度重なる不正のために1994年と2004年に革命化(思想教育)処分を受けた。それだけでなく、権力を盾にして美貌の芸能関係の女性を性の玩具にするなどの醜聞に濡れたことすらある。

(参考記事:美貌の女性の歯を抜いて…崔龍海の極悪性スキャンダル

崔氏は父親が故金日成氏の盟友である崔賢(チェ・ヒョン)氏の息子という血統だ。こうした人物が、朝鮮労働党中央委員会の副委員長という最高幹部に名を連ねているのだ。

庶民達もこうした現実を踏まえながら、日々の生活を堪え忍んでいる。しかし、あまりにもひどい場合は怒りを露わにする。そんな事例を米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝える。

RFAの情報筋によると、平安南道(ピョンアンナムド)の人民委員会(道庁)のカン・ヒョンボン委員長の妻が一酸化炭素中毒になり人民病院に運び込まれた。カン・ヒョンボン氏は朝鮮労働党中央委員会の中央候補委員も務めた経歴を持つ大物政治家だ。

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北朝鮮では、暖房に石炭を使うことが多く冬の時期になると一酸化炭素中毒が頻発する。病院では、すでに同じ一酸化炭素中毒の患者が3人いた。治療のためには、気圧と酸素濃度を高めた装置の中に数時間入らなければならない。しかし病院に装置は1台しか存在せず、1人ずつ順番に治療するしかない。

そしてカン委員長は、すでに装置の中に入っていた男性患者を追い出して、妻を治療させたのだ。順番を待っていた女性2人の夫が強く抗議したが放置され、結局、計3人が死亡。そして、これに激怒した夫と家族たちは、医師と看護師に暴行し死亡させてしまった。

病院は司法機関の取り調べに対して「委員長から電話でしつこく催促されたのでどうしようもなかった」と弁明している。委員長が処罰されたかどうかについて、情報筋は伝えていない。

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さらに、道内では別の幹部による「セクハラ事件」が、市民の怒りを買っている。

最近、平城(ピョンソン)市を訪れた両江道(リャンガンド)の情報筋によると、平城市場の勤労団体のキム・ガプス副部長が、同じ町内に住んでいた市の青年同盟学生部の女性指導員を「労働党に入れてやる」と甘い言葉で誘い出し、レイプする事件が発生。女性は妊娠してしまった。このような出世をエサにしたセクハラやレイプ事件は後を絶たない。

これに激怒した女性の父親は、副部長の家に乱入し、ガソリンを撒いて火を付けた。その場にいた家族は顔などに重い火傷を負った。その後、キム副部長は逮捕され、裁判で労働教化(懲役)2年の刑に処された。この事例ではレイプした側の幹部が処罰されたことが唯一の救いだが、国家権力の上にいけばいくほど隠蔽されるケースが多い。

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権力層の横暴は、いつの時代どこの国でもあるだろう。しかし、北朝鮮は民主国家でないため、それを告発する言論や公正な機関が存在しない。非合法な手段で庶民らが怒りをぶつける事件も、結局は金正恩体制がもたらしたものといえる。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記