実際、この訓練を通じて戦闘力が高まり、挑発をしてきた事例もある。2010年1月27日から29日にかけて、北朝鮮が北方限界線(NLL)の韓国側に向けて400発の海岸砲や自走砲などを発射した。そして3月26日には、韓国海軍の哨戒艦・天安の撃沈事件を引き起こした。さらに、同年11月23日から25日にかけて延坪島に向けて無差別砲撃。海兵隊員2人と民間人2人を殺害した。
警戒すべきは、正恩氏がゴムボート視察で「延坪島火力打撃計画戦闘文書」を承認していることだ。この文書が具体的にどのような内容なのかは不明だが、誰が聞いても6年前の延坪島砲撃事件を思い起こすだろう。そうした経緯を踏まえて、あらためてゴムボートに立つ正恩氏の写真を見ると、実に不気味に思えてくる。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。