そうなれば、正恩氏は向こう数年間の猶予期間を得たも同然である。その間、北朝鮮が過激な行動を繰り返すのか、あるいは大人しくなってふりをするのかはわからないが、核兵器の原料となる核分裂性物質を増産していくことだけは確実だろう。
数年を経て韓国の政治が落ち着き、トランプ政権の次の政権が誕生したときには、正恩氏は今の数倍の核戦力を有している可能性があるということだ。しかも、若年の正恩氏はその間に経験を積み、狡猾さも増しているかもしれない。
そんな未来を想像し、正恩氏が心からトランプ勝利を祝っていたとしても、全く不思議ではないのである。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。