金正恩氏の「海賊海軍」は中国漁民をリンチ…黄海での水産資源争い

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違法操業を繰り返す中国漁船と韓国海洋警察の対立が激化している。

今月7日、韓国の排他的経済水域(EEZ)で、違法操業をしていた中国漁船を取り締まろうとしていた韓国海洋警察の警備艇に、中国漁船が体当たりし、沈没させる事件が発生。死者は出なかったが、韓国政府は中国政府に対して厳重に抗議した。

中国漁民にせい惨なリンチ

先月29日には、中国漁船を取り締まり中の韓国海洋警察が使用した閃光弾により船上で火災が発生し、中国側の船員3人が死亡する出来事があった。この二つの事件以外にも、海上における両者の衝突によって度々死傷者が出ている。韓国側は狂暴さを増す中国漁船に対して「積極的に武器を使用することを検討する」としており、衝突はますます激化することが予想される。

一方、その中国漁船でさえ「海賊」として恐れをなす対象がある。北朝鮮海軍だ。朝鮮半島西側の黄海では、ワタリガニ漁を巡り南北の海軍艦艇がぶつかる事件が過去に起きているが、中朝間でもそれに劣らぬ争いが繰り広げられている。

北朝鮮海軍は外貨稼ぎの一環として、自国海域の漁業権を中国漁船に売り渡す。その一方で、漁業権を得ていない違法漁船は無慈悲に取り締まる。名目は取り締まりだが、違法操業の漁船を見つけるや襲撃し、金品を強奪。時には、長時間にわたって凄惨なリンチを加える。まさに「海賊」そのものだ。

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もはや取り締まりとは言えない北朝鮮海軍の横暴な振る舞いだが、中国側も被害船が違法操業をしていることから強く抗議できないようだ。

その狼藉ぶりはともかく、例え大国・中国であろうと自国の水産資源を脅かす行為に対して、真っ向から闘う北朝鮮海軍の気概は少しぐらい称えられてもいいかもしれない。ただし、北朝鮮漁船もロシア海域で傍若無人に振る舞い、ロシア国境警備隊の反感を買っている。

「処刑前」動画を公開

こうした北朝鮮海軍と現場の漁船の荒っぽい姿勢に、北朝鮮政府の意向がどこまで反映されているのかは不明だ。一つ言えるのは、金正恩党委員長は水産資源に対して異常と言えるほどの執着ぶりを示していることだ。

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昨年、金正恩氏は魚粉飼料工場を現地視察した際、「魚の生臭い匂いがしみた匂いをかぐと気持ちが爽やかになる。養魚場ごとにウヨウヨしているサカナの群れが、目の前に浮かぶ」と大喜びした。その反面、スッポン工場を現地指導した際は、管理不行き届きという理由で工場責任者を処刑。それだけでなく、その直前の激怒した動画まで公開した。

(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導

金正恩氏が、水産資源を重要視する姿勢を見せるのは当然だが、その本来の目的は庶民の食生活を向上させることだ。いくら不備があったからといって、工場責任者を処刑すれば庶民の食生活がよくなるというものでもない。その辺の道理を、正恩氏はわきまえるべきだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記