金正恩党委員長の誕生日が来年、正式な「祝日」となりそうな気配だ。
北朝鮮の朝鮮中央通信は11日、「2017年白頭山偉人称賛大会国際準備委員会」が世界にアピールを送ったと報道。このなかで、「 来年1月、金正恩閣下の誕生日を盛大に慶祝し、光明星節(金正日総書記の誕生日)と太陽節(金日成主席の誕生日)に続いて金正淑女史の誕生日を迎える12月まで多彩な政治・文化活動を活発に展開して2017年の丸一年を慶祝の雰囲気で沸き返るようにしよう」と述べた。
金正恩氏の誕生日が1984年1月8日であることは、実母・高ヨンヒ氏の妹であり米国に亡命した高ヨンスク氏や、訪朝した元NBAのバスケットボール選手であるデニス・ロッドマンにより明らかにされていたが、北朝鮮の公式メディアが、金正恩氏の誕生日を1月と報じるのは今回が初めてだ。
公開処刑で権力強化
このタイミングで誕生日を明らかにした理由としては、今年5月に父・金正日総書記でさえ開催できなかった36年ぶりの労働党大会を開催し、建国の父である故金日成主席とも並び立ったことを国内的に誇示する狙いがあると見られる。
さらに、北朝鮮の一般庶民に対して絶対的指導者であることをアピーする狙いもありそうだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面金正恩氏は、張成沢(チャン・ソンテク)氏や玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)氏をはじめ、朝鮮労働党や朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の幹部たちを処刑するなどの恐怖政治を通じて、独裁体制を強化している。すでに金正恩体制に脅威になるような勢力は皆無と言っても過言ではない。
ただし、政権内で独裁体制が確立しているものの、北朝鮮の一般庶民の間には、未だに金正恩氏を「若造呼ばわり」する声もある。つまり、必ずしも絶対的指導者の権威が確立しているとは言いがたいのだ。
こうした中、2017年が金日成氏の生誕105周年、そして金正日氏の生誕75周年、そして、金正恩氏が党・国家の最高の首位に推挙されて5周年にあたることから、きりのいいタイミングで誕生日を明らかにして更なる偶像化を加速させようとする狙いがあると見られる。
誕生日の名称は
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面韓国メディアは、平壌を訪問した中国人ビジネスマンの証言を紹介した米国メディアの報道をもとに、金正恩氏の誕生日が「銀河節」になると報じた。
金日成氏の誕生日は「太陽節」、金正日は「光明星節」だ。正恩氏が自らの誕生日を「銀河節」と設定したとすらなら、2012年12月12日に初めて成功した長距離弾道ミサイル「銀河3号」に由来していると見られる。
しかし、これだけ独裁者として権力基盤が確立しているにもかかわらず、さらに誕生日を祝日に制定するとは、どうやら正恩氏は祖父や父以上に、自己顕示欲が強く、また、絶対的な独裁者として君臨したいという願望が強いようだ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。