北朝鮮核開発の裏に「若き女性富豪」…米国のターゲットにも

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北朝鮮の第5次核実験に対して国連で制裁強化の声が強まる中、同国の核開発に関与したとみられている「女性富豪」が取り調べを受けている。また米国は26日、この企業を制裁対象に指定した。

ショップ店員から企業トップへ

中国の各メディアや米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、制裁対象となったのは、中国・遼寧省の中堅企業グループ・鴻祥実業有限公司。

米韓のシンクタンクは、北朝鮮が経済制裁を回避するため同企業を抜け穴として利用し戦略物資などを輸入、その中には核開発プログラムに使用できる原料が含まれていたと指摘した。

鴻祥実業有限公司のオーナーは馬暁紅氏(43歳)。ショッピングモールの店員から企業のトップへとのし上がり、対北朝鮮ビジネスで富を築いた。租税回避行為に関する一連の機密資料「パナマ文書」にも、名前が記載されていたとされるほどの女性富豪だ。

女性富豪の運命は…

馬暁紅氏は、瀋陽の北朝鮮系ホテル「七宝山ホテル」や、丹東の北朝鮮レストラン「柳京食堂」を経営。中国政府系のニュースサイト、中国網は「今年34歳(当時)の女富豪、馬暁紅は丹東で最も成功した中朝貿易業者だ。この一日だけで彼女は2000トンもの重油を北朝鮮に輸出した」と賞賛している。

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そんな彼女のサクセスストーリーは、突如として終わりを告げる。

27日付の朝日新聞電子版によると、米財務省は遼寧鴻祥実業集団は、大量破壊兵器の拡散に関与したとして制裁対象となった、北朝鮮に拠点があるクワンソン銀行の「ダミー企業」として、貿易や金融取引をしていた疑いがあるという。米政府の通告を受けた中国当局が「重大な経済犯罪があった」としながら同社の調査に着手したという。

さらに、遼寧省議員にあたる省人民代表大会代表でもあった彼女は、不正選挙容疑で代表資格を剥奪された。米中当局から「制裁」と「汚職」の二つで摘発されてしまった彼女は再起できるのだろうか。

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摘発の背景には、中国共産党内部の権力闘争が影響しているとの指摘もある。いずれにせよ命運は完全に尽きたと言っても過言ではないだろう。北朝鮮では、こうした失態は公開処刑などに直結する。果てして彼女の運命はどうなるのだろうか。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

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