金正恩氏の「犯罪追及」がさらに本格化してゆく

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韓国国会で今年3月に国会で成立した北朝鮮人権法が、4日から施行される。これに先立ち、韓国政府は8月30日、施行令案を閣議決定した。

施行令は、韓国法務省傘下に「北朝鮮人権記録保存所」を設置することを骨子とし、統一省直属の「北朝鮮人権記録センター」における北朝鮮の人権に関する記録の収集方法や資料の保存所への移管手続きを具体的に定めている。

虐殺事件の証拠

施行令にはまた、北朝鮮の人権実態を調査し、これを基に政策開発などを行う新設の「北朝鮮人権財団」の役員資格なども明記された。

北朝鮮の人権問題を担当してきた国連のダルスマン前特別報告者は今年3月の国連人権理事会で、金正恩党委員長ら北朝鮮の指導者を「人道に対する罪」に問う可能性を指摘しながら、この問題の国際刑事裁判所(ICC)への付託にも言及。理事会はこれを受けて、法的手段を探るための専門家グループの立ち上げを決議した。

韓国に新設される各団体は、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)がソウルに開設した北朝鮮人権事務所とともに、北朝鮮における「人道に対する罪」を問うための証拠集めをすることになる。

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北朝鮮の体制による人権侵害がいかに凄惨なものであるかは、「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)」の最終報告書(以下、国連報告書)に収められた数々の証言からもうかがい知ることができる。

(参考記事:「まるで公開処刑が遠足のようだった」…北朝鮮「人権侵害」の実態

それでも、この報告書が人権侵害のすべての側面を網羅しているわけではない。北朝鮮では、人権侵害を通り越した虐殺事件や、ムリな工期設定による大規模な労働事故なども起きている。

そうした出来事については、もちろん情報公開などされていないから、複数の脱北者の証言を総合しなければ全容を描くことができない。そのような証言の掘り起こしは、民間団体やメディアが担ってきた部分も大きい。

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韓国統一省の鄭俊熙(チョン・ジュンヒ)報道官は8月31日の定例会見で、北朝鮮人権法について、「これまで北の人権改善のため、各市民団体や各自が別々にしていたことを法の枠組みの中で体系的に整理し、進められるシステムを設けたことに大きな意義がある」と説明。人権状況を調べ、今後、責任問題を追及することも可能になったと強調した。

北朝鮮はもちろん、これに対して猛反発するだろう。そもそも、北朝鮮が国連制裁をものともせずに核開発に突き進む背景には、人権問題で日韓や欧米により追い詰められ、主要国との関係改善に絶望していることがある。

金正恩氏らに「人道に対する罪」を問うための証拠集めは今後も粛々と続くだろうが、いずれ北朝鮮が、過激な報復に出てくる可能性も捨てきれない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記