金正恩氏の「幹部処刑」と「ミサイル発射」は父親の7倍ペース

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韓国の国防・情報当局などの分析によれば、北朝鮮は金正恩体制になってから4年半の間に、実に31発もの弾道ミサイルを撃ちまくったという。

その内訳は、スカッド(射程300~1000キロ)16発、ノドン(同1300キロ)6発、ムスダン(同3500~4000キロ)6発、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)3発となっている。

体重も激増

金正恩党委員長の父親である金正日総書記の執権時には、18年間で16発の弾道ミサイルを発射した。正恩氏はすでにその倍の数を撃っており、年間の打ち上げペース(約7発)は父親の約7倍にも達する。

彼がここまで撃ちまくるのは、核ミサイルの性能を上げることが目的だから、満足できるまで今後も発射実験を続けるだろう。

ところで、「父親の7倍」という数字には、ほかでも見覚えがある。

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韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相は1年ほど前に開かれた討論会で、北朝鮮の金正恩政権が発足から3年半の間に幹部やスパイ容疑者ら約70人を処刑したと述べた。

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金正日時代には、同期間における処刑は約10人だったので、正恩氏は「父親の7倍」のペースで処刑を行ったということだ。

「最愛の妹」も俎上に

このような数字を見ると、正恩氏は独裁者として非常に生き急いでいるようにも感じられる。彼は、いまだ弱冠32歳である。今のところは国際社会と良好な関係を築けていないが、慎重に行動してゆけば誰よりも多くの経験を積むことができる。20~30年後には、老練な国家指導者として国際社会で一定の地位を占めることも不可能ではないのだ。

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しかし現在の彼の姿には、そのような未来を想像しにくくさせるものがある。体重130キロを超えたとされる体形の変化ひとつとっても、健康に不安を抱えていることをうかがわせる。

韓国メディアではすでに、「正恩氏に何かあったら、妹の金与正(キム・ヨジョン)氏が後を継ぐのではないか」などの観測が、ほとんど何のきっかけもなく唐突に出るようになっている。

それもやはり、金正恩体制の先行きの短さを、少なくない人々が直感しているからではないか。だがもしかしたら、それを最も強く感じているのは正恩氏本人で、だからこそ、独裁者としての人生を生き急いでいるのかも知れない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記